初代三遊亭天どん真打昇進披露特別興行「天は何を見ているのだ」@成城/09月01日(日)『新作の日』

初代三遊亭天どん真打昇進披露特別興行「天は何を見ているのだ」@成城ホール

9月1日(日)『新作の日』

<昼の部>
古今亭駒次:「お世継ぎ協奏曲」
春風亭百栄:「船越くん」
春風亭昇太:「マサコ」
三遊亭円丈:「悲しみは埼玉に向けて」
-仲入り-
口上(並び。左から、彦いち/百栄/天どん/円丈/昇太)
林家彦いち:「掛け声指南」
三遊亭天どん:「カベ抜け」

新作の日、昼の部開口一番は先生に聞いていた通りに駒次さん。恐らく緊張してたと思う。下手な噺はできない、しくじれないという遠慮も当然あっただろう。戸越銀座の老舗駄菓子屋・天野家(てんのけ)の話。わかりやすくて面白い。でも俺としては、いつものような鉄道落語とかしてほしかった。駒次さんはあらゆる路線に絡めた鉄道ネタを持つべきだと思う。もう持ってる?もし持ってなかったら、小田急線ネタも考えて欲しいです。

百栄先生の「船越くん」は黒門亭でネタおろしに聴いたネタ。面白くて、このネタも他のネタ同様好きなんですが、俺としては「天国と地獄」が聴きたかったんです。新作の日の今日は、古典と新作の両方を演じる噺家勢揃いだったわけで、それだけに俺は「天国と地獄」が聴きたかったんです。

昇太師匠は同郷の百栄先生の居住地「三ノ輪」をいじりまくる展開から十八番の「マサコ」へ。噺の中に出てくるカウベルのついた家は筋肉バカの安田君(=林家彦いち。本名は安田修)。マサコの彼は青木君(=春風亭百栄。本名、青木規雄)でした。三遊亭天どんこと、高野泰三も出して上げて欲しかった。

円丈師は悲しみは埼玉に向けて」。聴いたのは二度目かな。

口上の司会は百栄先生と聞いていたけど、実際は彦いち師。頼りなさげだから交代したのか。4公演の中で一番、縁が薄そうなメンツだった(百栄先生以外)。甥っ子の結婚祝辞を述べた百栄先生。ネタだと思うけど、さすがです。秀逸。


口上明け、彦いち師は「掛け声指南」。うっすらとエンディングが透けて見えてしまって…。

先生は何度も掛けて磨きに?磨き上げた自信ネタ「カベ抜け」。教わっている生徒からしてみると、面白かったけど、冗長な部分もあったのではないかなと。楽しくなっちゃって、延々とやっちゃったのかな。

 

別で来ていたグルメ先輩と合流。お茶。その後、先輩に薦められた「桂花(ケイファ)」。化学調味料・添加物を使わない澄んだ味の老舗中華で「黄ニラともやしと鶏のつゆそば」を。次から、成城ホールで落語会があるときのご飯はココに来よう。美味い!

 



<夜の部>
三遊亭玉々丈:「子役の旬」
春風亭一之輔:「らくだの発端」
柳家喬太郎:「一日署長~犯人・天どんバージョン~」
三遊亭白鳥:「豆腐屋ジョニー」
-仲入り-
口上(並び。左から、一之輔/喬太郎/天どん/白鳥/モロ)
モロ師岡:サラリーマン落語「新幹線の仇討ち」
三遊亭天どん:「ひと夏の経験」

開口一番は引き続いて駒次さん!と思ったら玉々丈さん。しかも先日、円丈らくご塾でも聴いた「子役の旬」。

一之輔さんは「子ほめ」*「らくだ」=新作「らくだの発端」。初天神の改作「団子屋政談」とか「不動坊バラ園」とかかな、と思ったら、さすがは一之輔さん。ド新作?。盟友・天どん先生の会だからこその、このネタかなと思いました。流してない感が半端なかった。

キョンキョンは「一日署長」。この噺はアイドルが一日所長としてやってくる警察が舞台に事件が起こるというネタ。このような目出度い?ド古典で攻めなくてもいい日に師がよくかけるネタ。その会の主役(噺家)を犯人役にして即興でアレンジしてかけてしまう喬太郎師ならではのネタ。当然、犯人は今日の会の主役・天どん先生。犯人を自首させようと登場する説得役には、雲助師匠と円丈師匠(の物まね)。犯人・天どん先生のモノマネにおいては、最後の最後には飽きてしまったようで。客には馬鹿野郎とか言ってるだけで先生っぽいから不思議。お馴染みの「東京ホテトル音頭」だけではなく、作ったご本人も「歌詞を忘れてる」という「ドットコム音頭」を。天どん昇進披露バージョンで替え歌で。市馬師といいキョン師と言い。かっこいい。

白鳥師は「豆腐屋ジョニー」。

仲入り後、口上。この夜の部の口上が一番良かった。もっとも先生が恐れる円丈師匠がいないし、もっとも仲良しであろう一之輔が司会。初めて出会ったときに「お前の師匠はパグみたいだ」と言われたと一之輔。「酷いこと言いやがって。お前の師匠はホッチキスみたいじゃねーか」と反撃。二人の仲良しっぷりを知ってる俺としては、男同士でイチャイチャしてるようにしか思えなかったですよ。一之輔師は一之輔師なりに、天どん真打昇進を大変喜んでいるんだと思う。一之輔さんは本気で批判(アドバイスというべきかな)してたりするしね。ひねくれ者同士、素晴らしいと思う。ひねくれてるから、俺は二人が大好きさ。

一方、喬太郎師匠は愛情たっぷり。悪口に始まり、最後の最後で先生を真正面から褒めた。4回の口上でここまで先生を褒めたのは喬太郎師匠。落として落として落としておいて、優しく褒めるから、俺、ちょっろと、こみ上げるものがありましたよ。流石だわ、喬太郎師。客を泣かせるのが巧い。「天ちゃん、また(柳家)喬之助と3人で呑みに行こうよ」ってのも個人的にぐっと来た。

モロさんは背広で演じるサラリーマン落語。「宿屋の仇討」を現代に置き換えた「新幹線の仇討ち」。面白かった。プロの噺家がやるともっともっと面白かったと思う。

最後の最後に、先生が「ひと夏の経験」を。「落語はディテールに宿る」と誰かが言っていたように俺は「プラスチック・イーレーイザー」にハマってしまった。その一点だけで忘れられない噺。「プラスチック・イーレーイザー」、絶妙な最強ディテール。

 

 

2日間4公演。そのたびに配られたプログラム、計4枚。その裏面に、共演者に対する先生のコメントが載っている(写真)。

落語教室の打ち上げで話す先生は、いつも口が悪く、ぶっきらぼうで、ひねくれてて、照れ屋で、まっすぐくじゃなく、そういう性格に俺はものすごくシンパシーと共通部分を見出して惹かれているわけだが、「口上では誰も僕を褒めない」「縁が薄い」「どうでもいい」「適当に頑張ります」とか言いつつも、決してそんなことがないことをファンや生徒たちは恐らく知っていて、見透かしてて。

そんな三遊亭天どんが唯一、主演者の人たちに対する想いや感謝を客に伝えたのが、この4点のプログラム。いくら聴いても普段言わない人だけに、ここまで素直に気持ちを吐露したのは貴重(な資料)だと思うので、スキャンして公開する次第です。照れ屋ちゃんだからなぁ、先生は。9/21から始まる披露興行もがんばってねー。行けたら行くねー。なんだよーーー

 

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コメント: 2
  • #1

    やまちゃん (月曜日, 02 9月 2013 16:39)

    二日間、しかも昼夜でいらっしゃったんですね。すごい!
    天どん先生、生徒のコードネームさんに足を向けて寝られないですね。
    4点のプログラム、公開したことで天どんさんの株価が上がったと思います。
    連日、レポのまとめを含めお疲れ様でした。行った気分になれるレポ!
    ありがたきしあわせです!

  • #2

    code-name-blog (火曜日, 03 9月 2013 12:22)

    やまちゃん さん

    コメント有難うございます。

    土日×昼夜と4食連続で天どんを腹いっぱい食べてきて、いままさに、軽く胃もたれ中であり、ドベテランのド古典を聴いて、脳波をリセットしたい感じです。

    あんなにたくさんのファンに愛されて、大勢のファンの一人としてもうれしいです。客に愛されるというのは大切な資質かと思いますし。(仕事でもなんでも言えることですが)

    素晴らしい真打ちになって、5年後も10年後も落語ファンを楽しませてほしいです。