壽・真打昇進襲名披露興行~三遊亭天どん@鈴本29

ベランダの夏みかんの植木にアゲハチョウの幼虫が棲んでいる。日々、大きく育っていて、しばらくすると蛹化して羽化して飛んでいくのだろう。気持ちの良い青空に向けて写真を撮ってみた。今日と言う日にぴったりな一枚。落語業界で言えば、まだまだ幼虫・天どん。

 

落語に限らず、人の列に並ぶのが大嫌いな性分なのですが、仕方がないよね。長蛇の列に並んで開演を待つ。俺の前に居たのが、浦和の寄席の関係者のお姉さま方。待ってる間、いろいろとおしゃべりしちゃった。こういうのは楽しい。「天どんくんはね、落研時代、ほんとに無口で大人しくて、『ほんと、この子、大丈夫かしら?』って思ったのよー」とかね、いろいろ。浦和寄席にもいつか行ってみよう。


壽・真打昇進襲名披露興行~三遊亭天どん@鈴本29

古今亭志ん吉:「無精床」
金原亭馬遊:「猫の皿」
翁家 和楽社中
三遊亭白鳥:「スーパー寿限無」
柳亭市馬:「一目上がり」
ホームラン
三遊亭圓丈:「強情灸」
柳家小三治:「小言念仏」
古今亭菊之丞(代演):「親子酒」
-仲入り-
真打披露口上
林家正楽(代演):紙きり(若駒・雷門・東京オリンピック)
春風亭一之輔(代演):「粗忽の釘」
柳家小菊:粋曲
三遊亭天どん:「百年目」


相変わらず飄々と馬遊師匠は「猫の皿」。

白鳥師匠は「スーパー寿限無」。本題の前に観客全員とノーマルな寿限無を合唱。師匠なりの祝儀だろうね。

王道の市馬師匠は御めでたい噺「一目上がり」を。さすがです。こういう噺家さんも序盤にいないとしまらないよね。

ホームラン先生。俺が聴いた中では今日が一番面白かった。「何ピン人?何ジル人?」が俺の笑いツボにガツンガツンとハマりまくりました。手練れだし、機転も効くし、流石だわぁ。

小三治会長は「小言念仏」。心地よいリズムに誘われ、上野界隈の睡魔たちが総動員で俺を襲いにやってきました。くわばらくわばら。

三三師の代演は、うれしいことに菊之丞師匠。「親子酒」。巧いなぁ。師匠のお酒の噺を聞いていると必ず日本酒が呑みたくなる。いわゆるひとつの「喜多八師匠現象」と俺が呼んでいるところの現象。

真打披露口上。左から。市馬(司会)・天どん・円丈・小三治。「わたしは、天どんさんとは縁もゆかりもないのですが」と話し始めた小三治師匠だが、最終的には「彼は天才だ」とか「七代目三遊亭円生を継ぐのは彼だ」とか、持ち上げる持ち上げる。パワーショベルか、クレーン車かよ。なんだよー。

二楽師の代演は正楽師匠。紙きり(若駒・雷門・東京オリンピック)

白酒師匠の代演は一之輔師で「粗忽の釘」。普通に面白いんだけど俺からしたら流し気味。お客さん笑い過ぎ気味。鈴本に上がる前に本意気で何席か演って来たのだろうな。忙しい噺家さんの場合は、こういうことがあるからなぁ。ちょっと残念。

変わらぬかっこよさは小菊師匠。いよっ!はっ!ぺぺんぺん。

先生は、六代目三遊亭円生、五代目古今亭志ん生が得意にしたという「百年目」を。真打披露口上とストーリーがつながっていて(偶然だろうけど)なかなかの演出。もし演出だったら、先生の恐ろしさは凄まじいこと、この上なし。どっちにしても、先生の覚悟と言うものを感じた。しかと受け止めさせていただきますぜー。

「約束通り来年はおまえさんに店を持ってもらう」=新・真打としての門出・旅立ち・さらなる独り立ち。

「もう、これが百年目と思いました」⇒「ここで逢ったが百年目」=先生の覚悟の現れ

なーんて風に考えるのは、俺の考え過ぎなのだろうかな。

25日よりも、数段良かった今夜です。やっぱ、俺は先生の新作よりも古典が好きだぁ。ただ、“お祭り”は楽しい分だけ、観ている方も疲れるねー。ふぅぅぅ

あの先生が(どの先生が?)、七代目三遊亭円生候補筆頭かぁ。という感慨に耽りながら帰宅した俺は永谷園の天茶漬けとバターコーンで喜久酔を。

「百年目」の途中。事前に二つ目さんたちを総動員して客に渡しておいたピンク色の厚紙(先生なりの感謝のメッセージボードですね、これは)を「さ、ここですよ!」とみんなに掲げさせるという前代未聞の演者と観客の一体演出。円丈師匠譲りの参加型落語。(噺家人脈の多い先生ならではの仕掛けだな)

高座から観たピンク色に染まった客席は、さそがし、桜が満開の向島土手(「百年目」のワンシーン)のようだったでしょうね。さすがは、鬼才・天才どんだぁ。参加型で高座の上から客席を写真撮影する手法は、「らくご男子校」と同じでしたね。

にしても、一枚づつ手書きでなんてね。素直にありがとうと言えない照れ屋さんならではの精一杯の(最高の!)演出でしたね。

最後には、なんと、カーテンコールも。

天どんは二物を与えず

 

天どんは自ら助くる者を助く

「落語のすゝめ」。天どんは天どんの上に天どんを造らず天どんの下に天どんを造らずと云へり。つまり、唯一無二の天才・天然・天どんな噺家。それが天どん先生。アゲハ天どん、まだー?