2月上席夜の部「春風亭百栄」主任興行@鈴本

2月上席夜の部「春風亭百栄」主任興行@鈴本

林家けい木:「十徳(じっとく)」
桂才紫:「黄金の大黒」
鏡味仙三郎社中:太神楽曲芸
柳亭燕路:「花見小僧(おせつ徳三郎・上)」
三遊亭天どん:「手足」
永峰ゆう子:昭和歌謡歌まね(江戸家小猫代演)
柳亭市馬:「普段の袴」
橘家文左衛門:「のめる」
-仲入り-
林家二楽:紙きり(雪景色・ソチ五輪と二楽師匠)
柳家はん治:「ろくろ首」(入船亭扇辰代演)
ロケット団:漫才
春風亭百栄:「天使と悪魔」


折からの雪は夕方ごろにピークに。「こんな日に寄席に来るお客様こそ、真の落語ファンです」と持ち上げられたくて、行ってきました。2月上席夜の部「春風亭百栄」主任興行@鈴本。(結果、燕路師匠と文左衛門師匠に持ち上げられてうれしかったわぁ~。)

開場とほぼ同時に入場。俺以外に3人。気分は上々。空いてる寄席大好き。どこであろうと混雑は嫌い。


開口一番はけい木さんで「十徳(じっとく)」。以前、黒門亭で聴いた時よりは数段上手に。

才紫さんは「黄金の大黒」。こないだ「才紫・朝也の会」で聴いたばかりだったので残念。違う噺が聴きたかったなぁー。

鏡味仙三郎社中。「あかぎ寄席」で味千代さんがやるのとおんなじ。「鏡味」一派は源流が同じだからか。女性二つ目が一人でやるほうが楽しく観ていられたが…。

御目当1人目。燕路師匠。「花見小僧(おせつ徳三郎・上)」。上手いなぁ。面白いなぁ。楽しいなぁ。誰か「柳亭燕路・こみち親子会」って、やってくれないかな。今なら速攻予約するんですがね。今俺の中で来ている人、燕路師匠とこみちさん。

久しぶりに天どん先生。新作のテッパン「手足」を。相変わらずの天どん流がすてき。サゲながら「寄席の中心で肛門外科と叫ぶ」という爪痕を残して去って行きました。かっけー!

永峰ゆう子さん。昭和歌謡歌まね。

市馬師匠は「小猫はどこへ行った。歌がかぶるじゃないか」と苦笑いしつつも、「普段の袴」。鎮静化している高座をしっかりと立て直すなんざー、流石です。

文左衛門師匠は「こういう日(雪の影響で客足が今一つな日)の百栄は違いますよ。やりますよ。『露出(さん)』とかはやりませんよ。今夜の百栄は人情噺をやるよ」と相変わらずの適当な投げっぱなしジャーマンな言いっ放しの大放言枕から「のめる」を。文左衛門師匠がやると、どっちか片方は必ずやくざな感じになるのがいいね。上方の演題はそのものずばり「二人癖」。個人的にはこの噺もいいけど、「四人癖」の方が好きだなぁ。

二楽師匠。こういう少数精鋭の日が来るのを俺は密かに待っていたのだ。押しの強い常連客が来ない日を。普段なら試し切りした時点で「どなたか欲しい人に差し上げます」に対し、「はい!はい!はい!はい!はい!はい!」と声が乱れ飛ぶのだが今夜は(しーん・・・)。こんな日!こんな日だよ。チャンスは!と、俺は桃太郎を試し切りする師匠を観ながら声を出すタイミングを虎視眈々、古紙耽々(いにしえの紙きり芸を待っている様)と狙っていたのであります。

いつもだと「なにかお題を…」と師匠がいいかけるやいなや、アズ・スーン・アズ、客席から複数の自分勝手なお題が乱れ飛びかうのだが今夜は違う。ライバルが少ない、いや、競合他者はほぼいない。

「なにかお題を…」と師匠がいいかけるやいなや、俺は前列2列、大好きな座席「ろの16」から大声で叫んだ。声が正確に届くよう、両手でメガホンをつくって。叫んだ。最上級の滑舌で。

「雪景色!」

やった!言えた!はじめて言えた!お父さんお母さんおばあちゃん。俺、言えたよ。叫べたよ。この時、お題を叫んだのは俺一人だけだった。大丈夫だ。これなら二楽師にも正しく確実に正確に届いているはずだ。

二楽師「いただきました雪景色。でも、いまなら鈴本の外に出たほうがよっぽど観れると思うんですけどね」と言いつつも、切り出しはじめる師匠。

(やった!やった!やった!やった!やった!やった!)

ようやく、切ってもらえる。生まれて初めて。生まれて初めて成功した。俺と師匠とのコラボだ。やった。

師匠が切っている間、俺はネックウォーマーを外し、膝に掛けていたコートを外した。前に取りに出ていくのに、間髪を入れず、もたもたすることなく、スムースにピックアップできるようにだ。師匠の貴重な時間を無駄に奪うことは俺には許されない。大切な大切な俺と師匠とのコラボ作品。この世に一つの。即興芸。

これまでなんど辛酸を舐めた事だろう。忸怩たる思いで涙で鈴本の座席を濡らしたことだろう。それがすべて報われた瞬間だった。それがついに、今夜俺の手中に!作品は勿論、切っていただいた者のみがもらえる栄光のグッズ、栄誉品、戦利品、勲章、褒章。林家正楽・二楽親子専用の紙きりお土産用専用厚紙封筒付き。感激。

あぁ、なんて素晴らしい夜。だが俺はまだ気づいてはいなかった。もうひとつの素晴らしい出来事が俺を待ち受けていることに。

扇辰師匠の代演のはん治師匠は「ろくろ首」。派手さはないが、端正な落語で俺は好き。喜多八師匠との兄弟会をやってほしい。〆治・喜多八・はん治・福治・燕路兄弟会でもいい。どなたか!

ロケット団。時間調整で高座時間が短かったのが残念。今週末の定例会に初参加するから、そこでみっちり、たっぷり。

で、こっからが“もうひとつの素晴らしい出来事”ってやつよ。百栄先生。仲入りにお菓子を用意して、みんなに配ってくれた百栄先生。そんな百栄先生がかけてくれたのが、「天使と悪魔」。

うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ

俺は座席で小さくガッツポーズしたのさ。

俺が生で一番聴きたかった百栄噺だったからだ。

実は以前、百栄先生に直接メールしたことがある。「どっかでネタ出しするとき、まだ生で聴いたことのない『天使と悪魔』をかけてくれませんか」って。手持ちの栄助CDでしか、この噺は聴いたことがないもんで。

そしたら丁寧にお返事をいただいた。春風亭百栄という人間性を、人間の素晴らしさを体現している文面で。内容はここでは披露しないが、それはそれはすてきな優しいお返事だった。ふにゃふにゃしている高座姿を内側からしっかりと支える堅牢なプロの覚悟と矜持を見た。俺はますます春風亭百栄という噺家に惹かれましたよ。いまだに大事に取ってある。このメールも宝物。

そんな俺に向かって、前列2列、大好きな座席「ろの16」に座っている俺に向かって、(おい、そこのお前。観ているかお前だよお前。お前、いつか、俺に『天使と悪魔』をかけてくれませんかってメールくれたよな。今夜はよく来てくれた。だから、おい、お前。お前のために『天使と悪魔』をかけてやるよ。おらおらおら!聴けよ。耳の穴かっぽじって、とくと聴けよ)と言って

くれているように俺には思えたのよ。

だから、感激で身震いしてしまった。身震いしてから、笑った笑った笑った笑った。

昼は古今亭、夜や柳家。いや-、いい夜や。いい一日や。

 


楽日を終えて、補記。

 

初日 01(土):「バイオレンス・スコ」

二日 02(日):「どら吉左衛門之丞勝家」
三日 03(月):「船越くん」
四日 04(火):「天使と悪魔」※聴きに行った
仲日 05(水):「芝浜・改(通称:ジャム浜)」
六日 06(木):「一人酒盛」
七日 07(金):「鮫講釈」
八日 08(土):(大雪のため、鈴本自体が休席)
九日 09(日):「疝気の虫」(市馬師匠の代演)/「キッス研究会」前日の分を補う合計2席
楽日 10(月):「露出さん」

 

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コメント: 2
  • #1

    tutaj (金曜日, 03 11月 2017 20:03)

    sztab

  • #2

    wróżka 2,46 (金曜日, 17 11月 2017 21:05)

    ukierunkowanie