自動車業界と並び、家電業界は、日本の輸出を支えてきた重要産業です。でした。
でしたが、リーマンショック以来、その立場は揺らぎに揺らぎ、2009年以降、その貿易収支は赤字に転落。国際競争力を失いつつあるのがいまの日本の家電業界です。
金融危機、需要低迷、成長する新市場への対応、そして災害時における対応や為替への対応などといった課題が挙げられていますが、果たして課題はそれだけでしょうか。生産の構造改革よりも、頭の中の構造改革が必要なのではないでしょうか。
まず第一に「なぜモノが売れなくなってきたのか」を正しく理解できていないように思えます。なぜ需要が低迷しているのかを理解していないように。それは金融危機や災害だけのせいではなく、そもそもの理由は、モノが一通り一般家庭に行き渡ってしまったという状況にあるように思えます。
さらに、ネットや半導体技術の進化に伴う価格性能比の向上と供給過剰、アジア勢の台頭がもたらす製品の「コモディティー(汎用品)化」と戦うためには、「良いものをつくれば売れる」という昭和のものづくり姿勢でもダメでしょう。
日本企業はこれまでの成功体験から、よいものは売れると高機能商品を作り続けましたが、市場は先進諸国から新興国に移っており、市場の消費者の要求は変化していました。「よいけど高い」商品は売れなくなり、市場原理による「安い」商品か、消費者にとって魅力がある「高いけどよい」商品しか生き残れなくなったのです。日本企業が気付かないうちに市場のプレーヤーとルールが少しずつ変わり始めていました。
ハイスペック勝負だけの「ものづくり」に未来はありません。これからは新しいライフスタイルに即したもの、ライフスタイルを豊かにしてくれるモノだけが売れていくでしょう。競合商品よりも高いiPhoneの市場席巻や、ガラケーよりも高いスマートフォンが総じて売れてきている状況をどう見るかです。
家電業界に限らず、どの業界も市場ニーズを把握できないでいます。潜在ニーズに気づけない、掘り起こせないでいます。
ただ、ヒトが生きていくのに、まだまだ電気は必要不可欠。つまり、電気を必要とするモノ市場は、まだまだ未知数だということです。いまの世の中で、電気を必要とするモノ、電気を動力とするモノ・サービス・コト(状況)にできるだけ早く気付くこと・自ら創りだすことが最重要でしょう。
消費者に受け入れられる新しい製品やビジネスモデル(特にコト市場)を打ち出せなかった結果が業績不振に現れていることは誰にも否定できません。
スペックだけが高い「高」機能よりも、「好」機能・「巧」機能といった方向性に未来があるように思えてなりません。
陳腐化した事業に全力を傾けるのは無駄。今以上の高精細テレビとして「4K」などを謳っていますが、3Dテレビの失敗を忘れたのでしょうか。
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