第17回 柳亭こみちネタおろしの会『これやっていいですか』

第17回 柳亭こみちネタおろしの会『これやっていいですか』

柳亭こみち:「大根調べ(※俺の勝手題)」「女版・大工調べ」(三遊亭白鳥作)
柳亭こみち:「町内の若い衆」
-仲入り-
柳亭こみち:「宿屋の富」

最近、ようやくこみちさんの巧さに開眼した俺です。遅くてごめんね。

こみちさんの独演会、単独勉強会を探していたらば、このネタおろしの会『これやっていいですか』を見つけて。

渋い客層。(俺は落語を知ってるぜ)という“通”オーラ発散させまくりの御人(おじん。おっさんという意味も。ダブルミーニング)が95%を占める。俺みたいな半可通は肩身が狭い。座席も狭い。(いや、超ド満員の道楽亭に比べたら、だいぶ座りやすい椅子の並びだったが)

俺の前の人生の大先輩70代男性は、嫌いな若手噺家(気持ちはわかるが、そこまで嫌いじゃない人)を批評していた。俺も、あんな風に歳をとって行くんだろうか。いや、いやだ。あんな歳の取り方(偉ぶる年寄り)は嫌だ。そんなこんなで開幕。


一席目の枕。こみちさんが「倅が~」って。息子でも子供でもなく倅。扇辰師匠の「かかあ」に続く、俺的ヒット。いいよね、「倅」。「かかあ」と「せがれ」は今後、どしどし使っていこう。日常生活で。

で。「早く吐き出したいんですよ」ってんで三遊亭白鳥師匠作の「女版・大工調べ」。

「いただいたものに手を入れていったら、全然『女版・大工調べ』じゃなくなったんですが、想いと心意気を感じて欲しい」とのこと。

大根売りを生業とする母が主人公の新作落語らしい落語。楽しかったですよ。楽しかった。白鳥師匠らしいわかりやすさは素晴らしい。女性視点で再構成された(古典)落語という試みにも賛同。&敬服。ただ今回俺はストーリー以上に、もっと“こみちさんらしい啖呵”を期待して行ったので、そこは残念でした。巧いだけじゃなく、もっとテンポよくスピード感たっぷりに語って欲しかった。

新作を吐きだしてほっとした表情で、「お客さんの『大丈夫なのか』という不安感がひしひしと伝わってきました(苦笑)」と、こみちさん。いやいや、これがネタ下ろしの会の醍醐味でもありますから。

でも、こみちさんが安心して古典をかけ始めた時には、~信頼のこみちクオリティ!~ みんなこれを感じて(ほっ)と。そんな安堵感に道楽亭全体が包まれた感じがしました。

大ネタの次は軽く~という感じで「町内の若い衆」を。おかみさんとか女性をやらせたら、天下一品だ。女流噺家の中ではぴか一ではないだろうか。

仲入り中に、日本演芸若手研精会(第392回)卯月公演のチケットをこみちさんから購入。柳亭市助・入船亭遊一・春風亭正太郎・柳亭こみち~仲入り~入船亭小辰・三笑亭夢吉ですよ。これは行きたいと思っていたので、渡りに船!18:30開演だが、行けるのか俺…。最低でも、こみちさん以降だけでも観ることができれば…。

ラストは「宿屋の富」。手馴れた感じでとんとんと。フルバージョンで聴きたい気持ちもあったけど、ここはこんな感じのさらり感が全体構成的には正解なんでしょうな。第18回も必出席!


終演後。前席の偉ぶる爺さんが「これは大工調べじゃなくて大根調べだね」と。悔しいけど同感。