第1回 夢吉・鯉八・松之丞の会@らくごカフェ
三笑亭夢吉:「のめる」
神田松之丞:「中村仲蔵」
-仲入り-
夢吉・鯉八・松之丞:トーク
瀧川鯉八「俺ほめ」
三笑亭夢吉:「身投げ屋」
夢吉・鯉八・松之丞の3人会は以前、一度開催されている。新宿スペースゼロでだ。そんなことを思い出しながら開場前に並んでいたら、奇遇にも、その列に、俺の前後にスペースゼロの関係者(後ろはなんと社長!)だった。座席も前と後ろ。挨拶を交わして、11月の回の予約を、そこで済ませちゃった。落語を通じての人脈形成、人の輪のつながり。大変にありがたいことです。
開口一番は、着物の紋が「夢」になってました。かわいらしい着物で登場。夢吉さんで「のめる」。ちょっと手に付けるだけの糠が、どんどん過剰になり、全身に塗りたくって「安倍川餅の化け物」みたいになるところなんかは、いかにも夢吉さんの骨頂。笑い笑いの連続。
ところが、結果的に夢吉さんの「のめる」を完全に呑みこんでしまったのが松之丞さんの「中村仲蔵」。グズグズ寺でのネタ下ろしを含めて何度か聴いているけども、今夜のが最高に良かったなぁ。夢吉兄さんに負けたくないという気持ちが働いたのかなぁ。トリ級の大熱演。
下廻り役者の苦労を重ねてきた仲蔵(初代・中村仲蔵)。「仮名手本忠臣蔵」五段目の定九郎の役を与えられる。ところが、その役は野暮ったいどてらの山賊。仲蔵、それを月代(さかやき)の伸びた白塗りの着流しの浪人姿という扮装に変えてしまいます。それが人気を呼び、仲蔵は一気にスターダムにのし上がる。という苦労の末の人情心理劇。
当時の仲蔵も31歳、今の松之丞さんも31歳。しかもどちらも「ニヒルで皮肉屋で、悪っぽい、どちらかというと影のある暗くダークな印象」。共通項が多いのでシンクロしちゃうのでしょう。いつにも増して、乗り移ったかのような迫真の高座。凄みも外連味もたっぷり。俺には松之丞さんの汗が、仲蔵の涙に見えました。今夜の松之丞さんは、人殺し(の講談)じゃなく、人たらし(客を虜にする)でした。美的。
夢吉・鯉八・松之丞:トーク。まぁ、伸びるとは思ってましたけど30分強。夢吉さんがしんどそうでした。最後の最後に飛び出した夢吉さんの芸談(というより芸観)が何よりの収穫。夢吉・鯉八両氏は三遊亭金馬(恐らく三代目)、春風亭柳好(恐らく四代目)が好きだってことがわかったのも収穫。夢吉さんの落語論好きです。
鯉八さんは「俺ほめ」。「まて!まて!まてぇ!」ってセリフは、鯉八落語に頻繁に登場しますね。それを含めて鯉八さんは言葉のチョイスが絶妙。丁寧な言葉選びで噺が紡がれている印象を受けます。マーちゃんのキャラもくっりりはっきりしてるし、没入できる面白い噺でした。
夢吉は「身投げ屋」。鯉八さんの「俺ほめ」のエッセンス(金平糖)を上手いこと交えてアドリブの聴くところも披露。上手い!今さらながらだけど、いい声してるなぁ夢吉さんは。「夢一夜」も楽しみ。
次回は12月17日(水)で鯉八兄さんが2席だそうで。
★マーケティングの視点★
グズグズ寺、成金と来ての、この三人会。手を変え、品を変えの組み合わせはお見事。展開を考えてる、恐らく松之丞さんのプロデューサー的采配・ビジネスセンス・勝負勘・人望・人脈は素晴らしいと思う。
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