第69回 鳥越落語会
柳家ろべえ:「牛ほめ」
柳家喜多八:「野ざらし」
入船亭扇遊:「鼠穴」
-仲入り-
柳家喜多八:「宿屋の富」
開口一番は、初代・ろべえさん。「牛ほめ」。出だしは(お、またさらに上手くなったな。結婚のおかげか)って感じたんだけど、徐々に…。(結婚ボケか?いや、そんなことはないだろうけども)な印象に。『天角地眼一黒直頭耳小歯違』な牛になれるように、モア精進!
にしても、この「牛ほめ(家ほめ)」。現代家屋に置き換えた「改作・牛ほめ(家ほめ)」ってできないものかと思ってしまった。「普請は総体檜造りで、天井は薩摩の鶉木目。左右の壁は砂摺りで、畳は備後の五分縁でございます」って言われても映像が浮かばないんだもの。
「間取りは全体8LDK。天井は高さ3メートルでガラス張り、左右の壁は総檜、床はカナダの大理石でございます」とか言われた方がピンとくるんすけどね。
で、待ってましたの喜多八師匠。(年末だし「睨み返し」かなぁ)と予想・期待してたら、「睨み返しをやろうと思ったけど、去年やってるんですよね」と師匠。(俺は「睨み返し」で良かったんですけどもぉぉぉ)
福治(柳家福治)さん常連の店をつぶした噺などを枕に、「(喜多八は)こんな噺はやらねぇだろうという噺を」とか、「時そばは素人時代によくやった」などと言いながら、「来年からちゃんとやります」て言いながら(以前もそんなことを言ってましたけども…笑) 「先生ぃ!先生ぃ!」と。「野ざらし」だぁ。
喜多八師匠の「野ざらし」初。師匠の「穴を見つけて…あらぁぁぁーー」って俺大爆笑。八五郎の独り基地貝っぷりが、はじけっぷりが、喜多八師匠の手にかかると、狂喜(狂気)を帯びてくる。こんな高座も素敵だ。惜しむらくは鼻を釣り上げちゃう前半までだったってこと。幇間(たいこ)のところまでフルフルで聴きたかったなぁ。すちゃらかちゃん♪
出色の出来栄えだったのが扇遊師匠の「鼠穴」。扇遊師匠、一世一代の「鼠穴」。夢落ちは嫌いな俺だが、今夜の今夜の会は扇遊師匠の「鼠穴」に喰われちゃったな、やられたな、という印象。(鼠だけにね!)
扇辰師匠の「甲府い」と同じ口調の「がんも~どきぃ~」。歌いの巧さは入船亭の真骨頂か。人物描写も上手い。鬼畜の兄と、弟・竹次郎との描き方がメリハリ効いていて、物語にグイグイ引き込まれる。しかも緩急が巧いから、なおさら、扇辰師匠の掌の中で右往左往させられてしまう観客たち。オチを知っていても涙する観客たち。
ギリギリと客の心を締め上げて締め上げて締め上げて締め上げて。そして最後に最上のカタルシス。これまでで一番の扇遊ワールドだった。場を支配してた。素晴らしい。
「景気のいい噺をしましょう」よ、喜多八師匠はトリで「宿屋の富」。扇辰師匠の余韻ではないけれども、比較してしまって、高座全体が小さく見えてしまった。
湯島天神の境内で一攫千金を夢見る輩の独り基地貝が「宿屋の富」の見せ場でもあると思うのですが、「野ざらし」のそれを観ちゃってるからなぁ。新鮮味に欠けるというかなんというか。
殿様や侍の高貴な、位の高い人を演じさせたら喜多八師匠の右に出るものはいないと俺は思っているけれども、その分、ズーズー弁のいなかっぺは…。どうも師匠の品の良さ、スタイリッシュさとマッチしないんだよなぁ。この点も俺にはハマりませんでした。
とはいえ、大好きな「鳥越落語会」。3か月に一度と言うサイクルも、俺をじりじりさせる。う~ん、憎い。どうか、いつまでも続けてください。石黒さん!
ちなみに過去3年の12月の会は、こんな感じ↓
第61回 平成24年12月16日(日)
柳家ろべえ:「芝居の喧嘩」(前座)
柳家はん治:「百川」(ゲスト)
柳家喜多八:「抜け雀」「大つごもり」
第65回 平成25年12月26日(木)
春風亭昇吉:「浮き世床」(前座)
江戸家小猫:動物物まね(ゲスト)
柳家喜多八:「紺屋高尾」「にらみ返し」
第68回 平成26年12月08日(月)
柳家ろべえ:「牛ほめ」(前座)
入船亭扇遊:「鼠穴」(ゲスト)
柳家喜多八:「野ざらし」「宿屋の富」
はん治師匠の「百川」、喜多八師匠の「大つごもり」聴いてから、もう2年かぁ。時の流れよ…。
★マーケティングの視点★
会場から歩いてすぐということで「孤独のグルメ」でも紹介された「まめぞ」に行って見たのだが、満席の上、おかみさん愛想なし。がっかりしながら、往路で見かけた「タイガー餃子会館」へ。まあまあ。もっとフォーカスが絞られてると思ったんだけどね…。餃子会館なら餃子だけで勝負してほしかった。
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