「夢吉のバカ!」改め「夢丸の○○ ~三笑亭夢丸ひとり会~」の第一回@お江戸上野広小路亭
三笑亭夢丸:ご挨拶
雷門音助:「道灌」
三笑亭夢丸:「だくだく」(ネタおろし)
三笑亭夢丸:「親子酒」
-仲入り-
三笑亭夢丸:「えんぜる」(夢丸新江戸噺・ネタおろし)
夢吉さんが、二代目・夢丸に昇進して、初めての「夢吉のバカ!」。会のタイトルを変えて新装開店。中身は変わらず。夢丸さんの独演会。
開口一番はしっかり者前座として高い評価を得ている音助さんが「道灌」。相も変わらず、話っぷりもしっかりしている。しっかりし過ぎてて、逆に怖いくらいだ。
夢丸さんの一席目は「だくだく」(ネタおろし)。高座に、ぶばばばばばーっと絵が浮かぶのは噺家さんの技量がある証拠。夢丸さんの「だくだく」は、上手に窓があってチューリップ畑と風車が見えた。下手には縁側。その先には枯山水が広がって見えた。素晴らしい腕前だ。
秀逸なのは最後のシーケンス。長押の槍を刺して、血がだくだくっと出たつもり。で終わらず、その後、槍を抜き取って、ぽきんと2つにへし折って、2人でぽかぽかと殴り合って(拳闘して)、「お前、なかなかやるな!」と矢吹ジョーと力石徹のように健闘を称えあって握手するものの、泥棒を取り押さえて、大家に突き出し、大家の「そんなばかばかしい話は聞かなかったつもり」というサゲまでの一連の流れは初体験。こっちの筋のほうが断然に面白い。さすがは夢丸さん。誰から教わった話なのでしょうか。聞いとけばよかった。知りたい。
続いては「親子酒」。座布団から離れて高座にドタっと寝転ぶダイナミックな動きの夢丸さんを見たのは今夜が初めて。それくらい見事な「親子酒」。白酒さんの酔いっぷりも大好きなのだが、それを超えた。自らがお酒大好きで酔っ払いな夢丸さんならではの人物描写。圧巻。お父さんも息子も見事に大虎でした。はんぱない泥酔者の仕草。素晴らしく面白かった。
「先代夢丸が大事にしておりました噺を本日はトリでやらせて頂きたいと思います」とのことで、今夜のトリネタは、初代夢丸師匠が取り組んでいた落語台本公募懸賞「夢丸新江戸噺」の第三回(2003年)の最優秀賞作「えんぜる」(原作:冨田龍一氏)。
ハートウォーミングな一席。もっと高座にかけていけば、かなりの確率で泣かせることができる人情噺になるでしょうね。夢丸さんの性格からして、そんな風にしたいのかどうかは定かではありませんが。(人情噺でも、さらりとした語り口が好きそうな、俺の勝手な印象)。
いずれも大満足な3席でした。「附子(ぶす)」も、ここで初めて聞いたのだし、この会だけは欠かしたくないなぁ。