■2016年05月号 古きを温め、新しきを起こす。


【温故知(起)新】 古きを温め、新しきを起こす。


美術館と、その周辺エリアの、
ビジネスモデルのリ・デザイン。

■行列に並びながら思ったこと
 先日、人気の展覧会「伊藤若冲展」に行って来ました。朝9:00「平日だし、雨だし、シルバーパスデーの前日だし」と高を括って行ったのですが、自分の甘さに腰が抜けそうになりました。すでに上野駅交番近くまで行列。雨の中、慌てて並ぶも、260分待ち”の状態でした。恐るべし若冲効果。建物内に入館したのは12:15。建物内でも並ぶこと30分。12:45頃にようやく入場。ここで初めて絵画と対面できたのです。絵の素晴らしさはもちろんですが、そこで、ふと思ったことがあります。
 最近、人気の展覧会では行列が凄まじい。しかし、主催者側はただ並ばせるだけですし、ビジネスモデルも入館料と物販によるものだけ。頭が古い。もっとビジネス展開に頭をひねるべきです。コンテンツによっては、何時間待ちも厭わない老若男女が黙って集客できるわけだから、それを収益化に結びつけるよう、努力すべきだと思う。すてきな「三方よし」が生まれるのに、と思う。

■視点① 待ってる人の時間つぶしで収益化
 単純思考で考えれば、待っている間、手持ち無沙汰です。退屈なのです。立って並んでいるのは辛いのです。それを解消するモノ・コトを販売してはどうでしょう。
 例えば、若冲(鑑賞事前)ガイドブックのような書籍ものを販売しても良いでしょう。待ってる間に予習してもらっても良いのですから。何も館内だけで鑑賞後だけに売る法はありません。
 他にも、食事の提供などが考えられます。野球場のビールの売り子さんのごとく、お客さんにお店の側から近寄って行って売ればいいのです。
 また、お一人様対策もビジネスになります。独りで並んでいるお客さんのための「トイレ行くときに代わりに並んでおいてあげますよサービス」なんてのもありです。

■視点② 待ち時間のコト化で収益化
 ただ並ばせておくのではなく、「何時に戻ってきて下さい」の当日整理券方式(時間制チケット)にするのも一つの手です。その間、お客さんは自由に過ごすことができます。2時間もあれば周囲の動物園や他の美術館、上野や鶯谷、日暮里などを散策できます。アメ横で買い物もできます。つまり、周辺のエリアにもお金が落ちるということです。美術館の集客力の恩恵が周辺エリアにも及ぶということです。お客さんも楽しむし、街も活気づき、win-winです。美術ができるまちおこしです。
 美術館のビジネスモデルを、ちょっと考え直す、リ・デザインするだけで市場は簡単に活性化します。飾っている絵画は古くてもいい。でも、ビジネスモデルは新しくないと。問題点が改善されると、そこには大きな大きな市場が待っています。(終)

 



若冲展 行列」 ←こちらの単語で検索してみてください。