第十一回 夢吉のバカ!@お江戸広小路亭

第十一回・夢吉のバカ! 三笑亭夢吉ひとり会

夢吉さん挨拶
瀧川鯉毛:「やかん」(ネタおろし)
三笑亭夢吉:「附子(ぶす)」(ネタおろし)
三笑亭夢吉:「五人男」
-仲入り-
三笑亭夢吉:「明烏」(ネタおろし)

夢吉さんが複数席ネタおろしをする会。前回行こうと思って行けず、今回は超待望の初出席。

夢吉さんの挨拶。「オープニングトーク」などと書かないところが、らしくて好き。札幌での“夢吉流面白話”。ブログを読んでいても、枕を聴いていても、噺を聴いていても思うことは、夢吉さんは頭がいい。語彙が豊富だ。特に日本語が。言い回しがユニークで何を聞いても笑える。観察眼も鋭い上、語彙力も豊富なので、ほぼ無敵のような状態。もっともっともーーっと売れてもおかしくはないが、それも時間の問題だろう。

春風亭一之輔が落語協会(小三治の方)の将来をしょって立つホープならば、三笑亭夢吉は芸術協会(歌丸の方)の将来をしょって立つホープだろうと思う。まだ二つ目だが、そんなのは俺に言わせりゃ関係ないね。面白いもんは面白いのだ。他人の決めた番付、格付けになぞ囚われたくはない。

最初の一席は瀧川鯉毛さん、ネタおろしの「やかん」。この人は飄々としているところがいい。声がこもり気味だし、言葉もつっかえつっかえなのだが、佇まいが飄々としていていい。なんか好き。というよりも嫌いになれないという感覚。大化けしそうな悪寒がします。

枕で札幌土産、みうらじゅん風に言うところの「いやげもの」の来場者プレゼント。変な顔のワッペン(?)と、何かの動物の牙か角のキーホルダー(何に付けて楽しむのだ?的な)と、最後のは「二ポポ人形」。アイヌ民族が作ってる(使っていた)木彫り人形。しかもペアで!対で!どれかもらいたかったなー。無念。

 

さて、夢吉さんの一席目は「附子(ぶす)」。こちらもネタおろし。御馴染み「一休さん」の話に登場するストーリー。どっちが先?一休さんでは小坊主だが落語では定吉。旦那も、番頭も、子供も、演るのが上手い。演じ分けもきっちり。芸が確かだなぁという印象を強くする。今年の夏、入間で聴いた時よりも、数段バージョンアップしている、まさに脂が乗りに乗っている状態なのではないだろうか、夢吉さん。

つづいては「五人男」。これまた演じ分けがばっちり。「附子(ぶす)」もそうだが、いわゆる落語らしい落語(若手噺家にみられる現代的な表現、英語、カタカナ語は一切登場しない。敢えて使っていないのだろうな恐らく)で、ここまで笑いを取れる噺家はそんなに多く居ないと思います。保守本流中の本流の笑芸人、三笑亭夢吉、ここにあり。

最後は「明烏」。ネタおろしに思えない完成度に脱毛脱帽。冒頭、御赤飯と煮しめで重ねて来たり、色っぽい部分が少なかったり、甘納豆喰わなかったり、若旦那・時次郎にフォーカスを絞ってストーリーテリングするこの「明烏」は誰から習った「明烏」なのだろう。一度、伺ってみたいものだ。とにかく面白かった。

想像だが、これは絶対に間違っていないと確信していることがある。これは確実に言える!と思えること。それは「三笑亭夢吉は独自の笑いの哲学をしっかりと持っている。(しかもそれが形となり実となり、客を確実に笑いの渦に巻き込める実力を持つ)」ということだ。古典と新作の違いこそあるが、春風亭百栄先生と同じ匂いを感じる。あまり誰ともつるまない(つるめないだけかもしれないが)孤高の噺家。ますます百栄先生と似ている。

 

(笑いの)地肩ができているから、ものすごい剛速球、ストレートど真ん中が投げ込めるし、また、それで客から簡単に三振を取れるのだろう。まるで松坂とかマーくんみたいだ。

しっかし、すげーなー、この人は。