林家はな平落語の会「はな平の開花前線」2

林家はな平落語の会「はな平の開花前線」2@戸野廣浩司記念劇場

林家つる子:「堀之内」
林家はな平:「大工調べ」
-仲入り-
林家はな平:「芝浜」


つる子さんは「堀之内」。前に聴いた「元犬」はつる子さん自身が子犬っぽくて可愛くて楽しく聴けた。かわいらしい女性がやる粗忽者は難しいなぁ。粗忽に見えない。間抜けに見えない。難しい所だなぁ。

相当緊張しているのがこちらにもビンビン伝わってくるはな平さんは、まずは「大工調べ」を。山場である、棟梁(とうりゅう)・政五郎の啖呵もきれいに決めて、お白洲のシーンまで通しで。あとはもうかけてかけて磨いて磨いてもがいてもがいて、はな平流「大工調べ」に仕上げていってください。

本日の目玉、トリネタは、はな平さんが今年から取り組み始めた「芝浜」。12月の噺として好きな方は多いが、個人的には他のネタ同様、特段の思い入れもなし。演劇会場なので照明演出を取り入れての高座だった。3つ揃いのスーツでオープニングのあいさつに出てきたり、「芝浜」の枕で一言、外国の著名人の妻にまつわる名言を一言いってから本編に入るなど。はな平さんのこの独演会に賭ける想いのほどが伝わってきてとてもよかった。熱く情熱的にだろうが、そこはかとなくだろうが、(楽しませてやるぜ)という客をもてなす感じが伝わる会と言うのは本当に来てよかったという気持ちに包まれる。噺家さんの了見がそこには見えるし、聴く側の背筋もしゃんと伸びると言うものだ。

今後は、個人的には照明演出よりも、除夜の鐘がボ~~~ンと鳴る、寄せては返すさざ波の音が聞こえるなど、音響的な演出が成されることに期待したい。冬の早朝の寒さについても、もっと観る側・聞く側が(ぶるぶる)っと震えるくらいに感じさせてくれるといいのだがなぁ。

毎年、年末の独演会にはかけてくれるのだろうから「芝浜」。来年以降も脈々と続く「芝浜」の成長・進化に期待しています。

なお、子どもさんが会場内にいると噺家さんは勿論、聴く側の集中が途切れてしまって…。そこは残念だったなぁ。



〔追伸〕


打ち上げで聴いた入船亭扇橋師匠の「芝浜」逸話が凄かった。聴いた途端、背筋に電気が走りました。

ある高座で、得意の「芝浜」をかけていた扇橋師匠。

サゲ手前までくると、最前列のお客さんが隣人に向かって、ぼそっと一言

「あれ、呑まねぇんだぜ」

有名な「芝浜」最後のシーンです。お酒で失敗を繰り返してきた主人公。断酒することで人生を立て直し、ようやく幸せを手にします。「これまでよく頑張ってきたね。今夜は呑みなよ、呑んでもいいよ」とかみさんに言われて、久しぶりのお酒。大好きだったお酒を目の前にして逡巡、心の葛藤を描いている名シーン。サゲの名セリフは「やめとこう。また夢になるといけねぇ」

その一言にカチンときた扇橋師匠は、サゲを急遽変更。本来は呑まないはずのお酒をぐびっと呑んでしまう。

 

(えぇ!)

恐らく、その場にいた観客たちは驚いたと共に、(このあと、どうするのだろう。どうサゲるのだろう)と固唾を飲んで見守ってはず。

すると扇橋師匠。おもむろに。

 

 

「お前さん、起きとくれよ」








うそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん。

すげぇぇぇぇぇぇぇぇぇ。

これを書いている今も電気走りまくり。

「芝浜」で「回り落ち」?(結末が、噺の最初に戻るもの)

 

かっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ

しびぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ(渋い)

激渋!

あぁぁ。俺もその場に居たかった!、その歴史的な瞬間をこの目で観たかったなぁ。