第18回グズグズ寺

第18回グズグズ寺

オープニングトーク:春風亭柳若&神田松之丞
春風亭昇也:「庭蟹」
神田松之丞:「三五郎殺し」(畔倉重四郎)
-仲入り-
春風亭柳若:「反対俥」
三遊亭小笑:「干物箱」

前回から始まった「成金」との区別化ポイントであるオープニングトーク。のあとに昇也さん。相変わらずの絶妙な枕。洒落がテーマの「庭蟹」に合わせた洒落についての枕は、今後の本題に綺麗につながることを予想させてくれ、聴いている俺を安心させた。どの噺家・講談師にも言えることだが枕と本題が噛みあっていると聴いていて本当に気持ちが良い。大袈裟に言えば完成された総合芸術感を感じる。面白いだけじゃなく美しい。ハゲボンボンとヒゲボンボンの枕も面白かったですよー。

軽く淡麗な噺「庭蟹」。寄席高座向け10分サイズ。自信たっぷりのときの昇也さんだった。観ていてわかる。早口にならず、落ち着いたテンポで。所作もきれい。特に昇也さんの手を叩く所作。いい音がするし美しい。大笑いするネタではないので俺としてはそんなに笑いはしなかったが、いい芸を見せてもらいましたという満足感がありました。

今回の俺の最大の目玉が松之丞さんの「三五郎殺し」。俺の大好きな畔倉重四郎シリーズの第9話目。

06話目:「栗橋の焼き場殺し」←ここからファンになり
07話目:「大黒屋婿入り」←これ聴いて
08話目:「三五郎の再会」←これ聴いて
09話目:「重四郎の三五郎殺し」←で、今夜聴いたのがここ

殺害シーンが出てくる噺が好き。ピカレスク・ロマンていいよね。トリップできるから。実生活では殺人はできないけど、人の殺害シーンに同化してカタルシスを感じ、ストレスを発散させるという。ピカレスク・ロマンこそが実害のない必要悪なのかもしれない。はけ口というか。

ところで、チラシに寄れば今度からの「きらり・松之丞二人会@ミュージックテイト」では、村井長庵シリーズをかけていくとのこと。

名奉行、大岡越前守が生涯裁いた中で「八つ裂きにしてあまりある」と言わしめたのが、徳川天一坊、村井長庵、そして畔倉重四郎。これを講談界で三政談という。

畔倉重四郎シリーズは、このグズグズ寺で聴けるからよし。村井長庵シリーズは「きらり・松之丞二人会」で聴くことができるようになる。これは朗報。

てことで、村井長庵の実態が知りたくて筒井康隆の小説「農協月へ行く」を早速購入。「村井長庵―歴史・時代小説集」というのもあったが、これは次回だな。

畔倉重四郎の小説はないようなので、畔倉重四郎のストーリーを知るには講談~神田松鯉・松之丞親子を追い続けるしかないようだ。

徳川天一坊は柴田錬三郎「徳川太平記 吉宗と天一坊(上下)」を読むとしよう。ピカレスク・ロマン最高。

さて、噺は神保町に戻る。

仲入り後は柳若さんが「反対俥」。「もう歳だ歳だ」と言いながらも、高座で元気よくぴょんぴょん跳ねてはじけた俥屋。4席の中では一番受けていた。噺同様、客席でも跳ねた。三笑亭可楽師匠とマトリョーシカの枕も面白かったですよ。

小笑さん。髪の毛が伸びてた。そういえば松之丞さんも伸びてた。今、俺も伸ばしてる。噺は「干物箱」。俺としては「干物箱」と聞くと雲助師匠のを思い出してしまうのですが、グズグズでは、それはなしですよね。小笑さん。なんだか最近、普通にこなれてきて普通の噺家さんみたいになってきたのがうれしいやらさみしいやら。あの(良い意味での)ぽんこつっぽさが味なのに。10年後、あの(良い意味での)ぽんこつっぽさを自在に操縦できるようになると恐ろしいと思う。

次回19回は3/27(木)。でも欠席します。なぜなら、『夢吉のバカ!11→12 』~三笑亭夢吉ひとり会~@お江戸上野広小路亭と重複しちゃってるから。許して!

その代わり、第20回はめもの特集の回には絶対に参加しますんで。