らくご@座 自由学園明日館「百花園探検部」

百花園探険部

    明治時代に刊行された落語・講談の人気速記本『百花園』(ひゃっかえん)。
    全240号に及ぶ稀少な古書がこのほど電子書籍で完全復刻。
    あの三遊亭円朝を始め、三遊亭円遊、禽語楼小さん、
    談洲楼燕枝、春錦亭柳桜、橘家円喬ほか
    明治の寄席を賑わせた名人達の高座に触れられる膨大な速記録です。
    この『百花園』から演目を掘り起こし、
    現代に通用する噺として甦らせる試みに挑みます。
    ――イザ實演、明治ハ近クナリニケリ。

 

 

らくご@座 自由学園明日館「百花園探険部」

ビフォートーク(全員 with緊張感)
三遊亭遊雀:「幽霊俥」
春風亭一之輔:「泳ぎの医者」
-仲入り-
林家彦いち:「昔の詐欺 第三」
桃月庵白酒:「朝友」
アフタートーク(全員 with解放感)


ビフォートーク。4人が4人とも、「早くネタを吐きだしたい」と言っていた今日のこみちさんと、まったく同じ心境にいるのが可笑しかった。これは俺だけが感じた可笑しさであろう。

遊雀師匠と「幽霊俥」。寄席サイズで充分通用する噺だと思った。が、幽霊(死人)と“あおし”という点では白酒さんの「朝友」と、ネタがついたのではないかと…。

アフタートークによれば、他の3人が元ネタをがしがしにアレンジを加えていたのに、遊雀師匠は愚直なまでに元ネタに準じて演じていたようです。他の人同様、もっと遠慮なしに遊雀師アレンジを加えていたら、もっと可笑しなネタに仕上げっていたし、今後もできると思った次第。

珍しく袴をはいて登場、一之輔さん。「泳ぎの医者」。部分的に可笑しいところはたくさん散りばめられていたし、枕の医者寝たふりからの流れもお見事。でも全体としては冗長。冒険活劇的「鰍沢」とでも言おうか。どうせなら、もっとハチャメチャな滑稽噺に振っちゃうのも手ではないだろうか。だが一番(最悪なのは)は夢落ちであること。俺は好きじゃない。むしろ嫌悪している。夢落ちは何でもアリ過ぎるから。白酒さんがアフタートークで言っていたように、4作品とももっとコンパクトにまとめられると思う。人が死ぬ(特に子供が)話はやだね。

彦いちさん。自身が清吉が嫌いで感情移入できなかったため、清吉の妹・お清という設定にアレンジしての「昔の詐欺・第三」。喬太郎・昇太・白鳥ら4人でやった昔の遊び(持っていないネタをなんとなく知ってる感じだけで演じるという遊び)の枕が一番面白かった。

トリは白酒さん。「朝友(あさとも)」という噺。「地獄八景亡者戯』(じごくばっけいもうじゃのたわむれ)」みたいな噺かな。と思って聴いていたが、すごい笑った。この人は本当にすごい。お笑い生産力がハンパない。笑いのネタを撒き、笑いを刈り取る能力が凄まじい。一之助さんが狩猟民族なら、白酒さんは農耕民族。お笑い生産高なら日本中の落語家の中で日本第一位だと思う。「死んだ客が、生前書いた証文をかたにして~」の辺りが、もっとわかりやすくなると、もっと良くなる気が。



アフタートーク。主催者側がまず16席を選び、その中から4人がかけたいネタをドラフト的に挙げていき、今夜のネタに落ち着いたという。そんな中、“4人がかけたいネタ”の多くが、一之輔師がかけた「泳ぎの医者」に集中してたのだそうだ。俺などは4人が別々のネタをかける趣向はもちろんだが、4人がかけたがった「泳ぎの医者」を全員でやるという、4人4色で考えてきてもらって聴くという趣向も面白いと思うのであります。「幽霊俥」「泳ぎの医者」「昔の詐欺第三」「朝友」の4つの中では、もっとも弄り甲斐があるネタだと感じるし。


4人を聴いてみて。やはり、この手の趣向だと白酒師が一番手練れ。巧いし、生き生きしてる。嗅覚もあるのだろう。新作落語の生き神様、円丈師匠に「お前、新作やれ」と言わしめただけの才覚、逸材だ。完全に自分の噺にしてる。一之輔師の“部分的に面白い部分がある”という「+α足してきました」的な改作ともまた違う全体的な面白さ。統一感。話し全体の締まり。昨日聴いて大笑いした「喧嘩長屋」は、「落語事典探険部」で白酒さんが掛けたことから今があるのだという。合点!合点!合点!さすがだなぁ。

その逆が遊雀師匠。話術はあるし、テクもあるし、しゃべりも上手いし。だけど、新作・改作は苦手なのではないだろうかなぁ。白酒師が「船徳」に出てくる若旦那の徳兵衛をチョイ役で登場させたりして爆笑を取っていたように、「幽霊俥」なんだから「替わり目」や「反対俥」のネタを絡めたりすると、俄然、笑いは取れたと思うのであります。真面目過ぎるんだろうなぁ、遊雀師匠。そこが大好きなんだけど。


アンケートにも書きましたが、この手のアカデミックで、理知的な探険シリーズ(大仰に言えば研究視点。普通に言えば物見遊山で野次馬な視点)は定期的に開催してほしいものです。「笑える」という面白さはもちろんですが、「興味深い」という面白さも感じたいし、落語好きのみんなと共有したいのであります。今回初の「百花園探険部」も、これまで2回開催している「落語事典探険部」も、是非とも面白がって企画し続けてほしいと思います。


打ち上げは目白まで歩いて「吉祥庵」へ。美味しいお酒と肴(あて)と天麩羅蕎麦。目も耳も舌も大満足。舌的には昨日以上の満足感。ご馳走さんでしたーーー