第8回 円丈らくご塾

第8回 円丈らくご塾

かえる・今いち・わん丈:前説
古今亭今いち:「スキー天国」
三遊亭わん丈:「ごりら穴」
三遊亭玉々丈:「ニワトリ」
夢月亭清麿:「時の過ぎゆくままに」
柳家かゑる:「小三治とかまぼこ~声帯模写」
-仲入り-
三遊亭円丈:「東京足立伝説」
古今亭駒次:「公園のひかり号」

 

前説。(あ、この人がかえるさんかぁ、今いちさんかぁ)と眺めつつ、わん丈さんのいつもにも増してのしっかり者ぶりの語り口調に安心感を覚える。このときは、まだ、(ん~)と辛い気持ちになるとも知らずに…。

今日初めて新作をかけると言う今いちさんは「スキー天国」。設定は季節外れだが、噺の面白さも期待外れ。とは行かず、これがどうして、意外にも面白かった。本当に今日が初めての新作?と疑うほどに、しっかりと。しかも、声がいい。よく通るし、きれい。これだけで噺家さんとしてはよい商売道具をお持ちで、と思います。雪山における男女の出会いを描いた噺。

今いちさんが恐らく狙って書いたであろうネタの部分ではそこまで笑えなかったが、意図していない、例えばマタギ風スキーウェアが鹿だったりニホンカモシカ(確か)だったりしたときに相手が言った一言「超貴重!」。これが俺のツボにはまりました。もっと聴いてみたくなる新作落語会のホープ前座さん。古今亭今いちさんには期待大。

御目当ての1人。大好きなわん丈さん。今日は何かな?と思っていると「前回の出演時にもっとエロくてもいいとお客さんに、それも女性の方に言われまして」、「師匠にもネタ見せは一応しております」と下ネタに。これは俺には無理だ。ダメだ。会終了後の反省座談の会で「男性の方が笑ってました」と清麿師匠はおっしゃってましたが、俺には無理。下ネタが苦手な上に、この「ごりら穴」という噺はリアル過ぎましたね。「下ネタで売れた奴はいないんだ」と円丈師匠。(うん、そうだ、そうだ)と、聴きながらうなづいた俺。「実験落語」的な方向性の強い会ですから、チャレンジ・スピリットは大いに買う者であります。スピリットは買うけど、ちょぴりっと“引いた”こともまた事実であります。

玉々丈さんは「ニワトリ」。玉々丈さんはふわふわと軽いところが(見た目と話が見事にマッチしていて)いいですよね。俺は初めて聴く噺でしたが、何度も何度もかけているネタのようで、反省会では「また、この噺か!別のをもっと創れ」とお小言を。

大好きな尊敬する清麿師匠。「時の過ぎゆくままに」。以前(確か第5回)も、このネタを。円丈師匠同様、「たくさん噺は創ってきた。三桁はいくはず。でも、すぐに話せる噺がそんなにない」とのこと。うーーーん。もっと清麿師匠の別の話を聴きたい!この噺は好きだけど、もっと清麿師匠の別の話を聴きたい!という気持ちがますます強くなり…。

かゑるさんは「小三治とかまぼこ~声帯模写」。てか、噺じゃなかった。枕というカタチの漫談を延々と。志ん橋師匠の声帯模写が似てた以外は…。あと、中身はともかく、このネタのタイトルは秀逸!一番笑えた。この手のグイグイ系の噺家さんはちょっとだけ苦手です。圧が強すぎて…。

円丈師匠は足立区の誕生創世記「東京足立伝説」を。昔、池袋で聴いた時は円丈師匠でゲラゲラ笑ったんだがなぁ。最近は寂しいです。ただ「二人の男女。その名をアダとチク」ってところは可笑しかったぁ~。

インフル上がりの駒次さんは「公園のひかり号」。鉄板の人情噺。もう、前半はみんな大笑い、後半はみんな泣く泣く。客たちを思うがままに誘導し操り、笑ったり泣かせたりできる。駒次さんは凄い。ただ、俺は別の噺が聴きたかったー。インフル上がりだから仕方がないのはわかっていますけどー。「ささはた寄席」にも行きますよー。

全体的に、これまでになく俺にヒットせず、途中(あぁ、これじゃ「遊雀with夢吉@高円寺ノラや」に行った方が良かったなぁ)とも正直、ちょっとだけ思ったけれども、実験要素が強い会のだから、(これはアリだ)と肯定的に捉え、しかも(あ、俺、今日、清麿師匠にサインもらいにきたんだった)と思い出す始末。

反省会後、師匠の傍につつつーっと寄って行き、「サインをお願いします!」と一言。「つばめのことを思い出してくれてありがとうございます」と師匠からご丁寧なお言葉も掛けていただき、ようやく本懐を遂げたのであります。サイン本、大切に致します。ありがとうございました。

夢月亭清麿師匠のお師匠さんである故・柳家つばめ大師匠の「創作落語論 (河出文庫)」は、落語好き・新作落語好きに取っては名著であります。そうであると俺は信じて疑わない。つばめ大師匠の考えも素晴らしいし、なにより、清麿師匠の解説が秀逸。グンバツ。超クレバー。俺は頭のいい人が好きだ。わかりやすく説明できる人を尊敬する。それが清麿師匠なのだ。

期せずして今日はハードボイルドがキーワードの「時の過ぎゆくままに」だったけれども、清麿師匠は本当に自分の考えをしっかりと持ったハードボイルドな男だと思うのだ。

次回は、6/22(日)。さて、誰が出るのかな。それで出欠を決めよう。