第20回グズグズ寺「オールハメモノ特集」

第20回グズグズ寺「オールハメモノ特集」@らくごカフェ

三遊亭小笑:「親子茶屋」
神田松之丞:「三年寝太郎」
瀧川 鯉八:「口相撲」
-仲入り-
春風亭柳若:「七度狐」
春風亭昇也:「百年目」

三味線:成田みち子、太鼓:春雨や雷太


第20回の記念すべき?節目のグズグズ寺。今回は「オールハメモノ特集」。「ハメモノ」とは落語の中で三味線や太鼓を鳴らしてネタを盛り上げる曲のこと。今夜掛るネタにはすべて音曲が入ってくるという。(どんな趣向になっているのか?)これはもう、今夜だけの大判振る舞い。他にもいろんな会があったが、迷わず、ここに。


思い切り昇也さんの「百年目」とツク(ネタが似ていること。被らないように避けるのが落語会の通例)のだが、小笑さんは「親子茶屋」。小笑さんらしいと言えばらしいが、いまふたつ、こなれていないネタおろし。松之丞さん曰く「鹿児島に帰っていて、錆びついて戻ってきた」。納得。せっかくのハメモノ入りなのですが、艶っぽいシズルが感じられなかった。

まだ昔の髪型のイメージが強く、今のヘアースタイルに(俺が)馴染まない松之丞さんは新作の「三年寝太郎」。古典(寝太郎)ベースの新作。松之丞エッセンスがふんだんに。てか、ほとんど?とにかく面白かった。今回の新作は鯉八さんの影響を色濃く受けているように思えたが、どうなのか。松之丞さんらしくなく、途中のネタが飛んで、台本ノートを観返すシーンもあったが、ご愛嬌ですな。それもこれも含め面白かったです。松之丞さんの守備範囲、また拡がった気がします。ただでさえ、オールマイティな絶対的な強さなのに。益々すごいことに。

久しぶりの鯉八さん。「口相撲」という半年ぶりに作った新作。15分サイズの鯉八さん初の長講だそうで。途中、寝てしまいました。すいません。「志ん朝師匠を意識した」というのは、これまでの鯉八落語にはないテンポと口数の多さでしょうか。これから面白く成長しそうな話ではありました。

柳若さんは「七度狐」。柳若さんという人は不思議な人だ。俺は、そこまでファンと言うわけではないのですが、こないだの「反対俥」といい、今夜の「七度狐」といい、なんかハマってしまう。物語と世界に引き込む力がある噺家さんなんだろうと思う。そんなに巧者に思えない見えないのだけれども、すごく引き込まれて、結果、大笑いしているという。すっかり俺も狐に騙され、麦畑や田んぼの中に立たされている気分になった。柳若さん、すごい人。

本日の御目当。昇也さんは「百年目」。先日鯉橋さんの「百年目」を聴いたばかりなので、比べちゃいかんといい聞かせながら聴く。長いから、筋を追うだけになってる感じがあるのは否めないけど、そこはそれ。冒頭は早口で(あれれ、また早口に。ダメなときの昇也さんが出た…)と思ったのもつかの間、本筋に入ったら、落ち着いて淡々と。遊雀師匠いわく『ネタおろしは、その噺家の、その噺が生まれた瞬間』。その出産現場に立ちあえた感慨は浅くない。道楽亭での独演会にも期待です。