五代目小さん・孫弟子七人会 夜の部@霞ヶ関イイノホール

昼の部終了が15:30。「4時間くらいかかると思っておいて下さい」と係員さんに言われていたので、(思ったよりも短いな)という狂った感覚に。先輩と、虎ノ門の焼き鶏居酒屋で、17:00まで“つなぐ”。いいよね、この“つなぐ”って業界用語。大好き。

五代目小さん孫弟子七人の会 夜の部

柳家さん坊:「松竹梅」
立川生志:「道具屋」
柳亭左龍:「座敷童」(藤沢文翁作)
入船亭扇辰:「野晒し」
柳家喬太郎:「猫久」
-仲入り-
柳家三三:「三人無筆」
柳家甚語楼:「狸賽・百面相」
柳家喜多八:「笠碁」


開口一番。さん坊さんは「松竹梅」。如才なし。如才なさが、かえってあざとい感じにも。難しいですね、落語って。

生志さんは「道具屋」。枕が昼の部とほぼ同じだったのは残念。80%くらいは昼夜でチケットとったと思われる(俺脳内調べ)。

ただ、本編に入ると一変。笑わせるのが上手い。「道具屋」と似ている系統の噺(与太郎噺)で「かぼちゃ屋」や「孝行糖」を持ち出して来たりして。試合巧者。途中から、「このまま『孝行糖』やっちゃいましょうか。でも、それだと三代目 三遊亭金馬追善になっちゃう」なんて。ナイス!いかす!

左龍さんは「座敷童」。この辺で風邪薬が効いてきてしまった。咳止め。くやしい…。おのれの病弱な気管支を呪う。気合い入れて、一生懸命聴きたかった噺なのにぃ…。「百鬼夜行由来の序でございます」というサゲはしっかり聴けたのだけども。昼の部が良かっただけに(いいもの聴き逃したなぁ)というがっかり感。

で、扇辰師匠のときには、おめめぱっちり。歌が上手い人しか、この噺はやっちゃだめ!「野晒し」は扇辰師のような人がやってこそ、生きるのだ。小三治もいいけど扇辰もね。いいもの聴いたなぁという昂揚感。

新作をやった左龍さん、「野晒し」で歌った扇辰師匠と比べて、「新作やりてぇっ!歌いてぇ~っ!でも大人だから我慢するっ!」と羨ましさ、嫉妬全開のキョンキョンは「猫久」。我慢するとか言いながら、結局、噺の途中、熊五郎が床屋に行く道すがら『池袋の夜』(青江美奈)を歌っちゃってましたけど。

「待っといで。今あたしゃ摺粉木をいただいてるところだ」というこの噺のサゲ、大好き。ご丁寧に摺粉木を押しいただく仕種もいいんだよねぇ。しかしなんだな。なぜ、日ごろ温厚な猫久さんが、あそこまで激怒しているのだ。この辺もスピンオフで描けると思うんだけどなぁ。サイドストーリーとして。

三三さんは「三人無筆」。にしても今日の「三人旅」「三人無筆」「三味線栗毛」はじめ、落語には三の付く噺が多い。「三人旅」「三年目」「三拍子」「三人息子」「三人癖」「三方一両損」「三枚起請」「三軒長屋」とか、他にも聴いたこと噺がいろいろと。三人までは演じ分けが容易だからだろうか。「おせつ徳三郎」なんてのも三が付くな。「三井の大黒」「紋三郎稲荷」もそうだ。名前に「三」のつく噺家さんも少なくないし。三は八に次ぐ援護の良い数字なのかな?そう言えば俺の名字も…。

甚語楼さんは「狸賽」。おまけに「百面相」まで。リアルに見るのは初めて。しかも、五代目小さんの代表的(?)一発芸「ゆで蛸踊り」まで。いや、良い余興を魅せいただきました。ありがとうございます、甚語楼さん。予定にはなかったことを、平然とやってのけるプロらしさ。プロの技量。そこにシビれる!あこがれるゥ~!

トリは喜多八師匠、「笠碁」。疲れたように見える(実際、体調は万全ではないのかもしれないけれど)喜多八師匠が、本編へと入る(あ、スイッチを入れたな)って瞬間も好き。

「あくび指南」といい「笠碁」といい、喜多八師匠の、喜多八師匠による、喜多八師匠らしさ炸裂の名高座。あの間はねぇ。ほんとため息出るな。嫌味っぽくなく、あの間を出すには、やはり齢を重ねるしかないのだろうか。先日聴いた白酒師の「笠碁」といい、小さなからだの噺家さんが空間を圧倒するのを目の当たりにするのは、ほんと木戸銭払ってみてよかったと思える瞬間。

昼夜で満足。大満足。ありがとう、石井さん。