第14回東北沢菊龍稽古会

第14回東北沢菊龍稽古会@北沢地区会館大広間

古今亭菊龍:「甲府ぃ」
古今亭菊龍:「さんま火事」
古今亭菊龍:「壺算」

5分は長い。

5分遅れて入場したら、善吉(「甲府ぃ」の主人公)はすでに「甲府の身延山に断ち物をして願を掛け、江戸に上京し、浅草寺の境内で巾着をすられ、無一文になり、腹を減らして市中をさまよい、葭町(よしちょう)の千束屋(ちづかや)という口入屋(くちいれや)を目指す途中で、とある豆腐屋の店先でオカラを盗みぐいし、若い衆に袋だたきにされかけたところを、豆腐屋のご主人が止めにはいり、事情聴取している最中だった。

5分は長い。早いと言うべきか。

ということで以前の「芝浜」同様、冒頭カットの状態で入場。菊龍師匠の「甲府ぃ」。さらりと、淡々としている。変な高ぶりも、お涙頂戴もない。そこがいい。「落語の原点は寄席」。ということをひしひしと感じさせてくれる。

途中、師匠の豆腐料理のレクチャーなどが挟み込まれ、緩急がある。長めの噺だが、凹凸があるので飽きさせない工夫なのだろうか。(今夜の打ち上げでは断然、豆腐を喰おう)という気持ちになり、ぎゅるるるると腹が鳴った。寒い季節に聴いたら、もっと、しっとり聴けたはずだ。このとき、会場のエアコンが効きすぎていたが、冬の状況ではなかった。

二席目は、師匠が三代目桂三木助師匠に教わったという(確か)「さんま火事」。(くっそぉぉぉぉ!もっと空腹感を増長させる作戦か!)と思うほどに「さんま火事」。まず、浅蜊登場。浅蜊の酒蒸しが食べたくなる。次にかぼちゃ。かぼちゃの煮つけが食べたくなる。で、仕舞には当然、秋刀魚だわな。打ち上げの居酒屋で秋刀魚の塩焼きがあったけど誰も頼もうとはしてなかった。

最後は「壺算」。師匠は甕(かめ)ではなく、(上方流に)「壺でやる」んだそうです。オチも当然上方流でした。初めて聴いたかも上方流壺算。

で、打ち上げ。師匠の隣で「一荷(か)、二荷(か)」の解説を聴きながら、「数のトリック」の話に。

3人のお客が旅館に泊まります。宿代として客1人10,000円ずつ合計30,000円を支払いました。すると店主が「5,000円をサービスしますよ」と。仲居に「5,000円を三人に返すように」と指示します。ところが仲居は「3人に5,000円じゃ割りきれないわね」と2,000円を自分の懐にいれて、残りの3,000円を3人のお客に返金。それぞれのお客が一人分として支払ったのは10,000円引く「戻ってきた1,000円」で9,000円。お客が三人ですから、お客が支払った額は27,000円。仲居が懐に入れた2,000円を加えて、27,000円+2,000円で29,000円。さて、残りの1,000円はどこにいったのか?

というような枕を振っていた師匠から、似たような数字のマジック手品の話をしていただいたのですが、俺にはチンプンカンプン。酔っていたせいもあることにしていますが、本当にチンプンカンプン。初めて「壺算」を聴いた時も、この数字のトリックが理解不能でした。そんな頭の回転の遅い俺。ま、昔から自覚はしてますが、それにしても…。みんなにも「あ、これは騙される人だ」「詐欺に引っかかる人だ」と笑われる始末。頭の回転の速い人には本当に憧れます。っでもなぁ、こんなに早口でトントンと言われたら、やばいよなぁ。

ときに、このトリック。

「お客が支払った額は27,000円。仲居が懐に入れた2,000円を加えて、27,000円+2,000円で29,000円」ってところが間違い。引っかけ。

この27,000円には、仲居が懐に入れた2,000円も入っている。よく考えればわかるよ、わかるよ!俺だって!。っでもなぁ、こんなに早口でトントンと言われたら…(なぬ?ぬぬぬ?)ってなっちゃいます。吾ぁ、ダメだ俺。回転が本当に遅い。遅すぎる。ま、いいんです。遅くても回転はしているのだからー。なんだよー

今夜の収穫。「俺は詐欺に引っかかりやすい。気を付けよう」

来月は「幇間腹(たいこばら)」を演ってくれるそうです。菊龍師匠は志ん駒師匠から習ったんだそうで、「幇間腹」。食べ物シリーズってことで、「蕎麦の殿様」もリクエストしてみた。楽しみ楽しみ。毎月、コンスタントに行けると良いのだが。

★マーケティングの視点★
落語に登場する「食べ物」。なんであんな美味そうなんだろう。無論、噺家さんの技量は関係ある。エアー蕎麦に、エアー日本酒、エアー秋刀魚の七輪焼きなわけなのに。「食糧(素材)・食事・落語」という3つを揃えると、美味しい「コト化」が完成すると思うのです。