初めての成金

昇也さんの出る日を狙って、今夜ようやく「成金」へ。毎回、超満員だと聞いていたし、金曜は他の用事が多い日なので、今夜まで来ることはありませんでした。期せずして、春風亭柳昇師匠の孫弟子4人が勢ぞろいの今夜。


昔昔亭A太郎(小痴楽さんの代演):「表と裏」

瀧川鯉八:「俺ほめ」

―仲入り―

春風亭昇也:「時そば」

春風亭柳若:「宿屋の仇討ち」


小痴楽さんの代演のA太郎さん。「表と裏」という噺は、俺にはそこまで・・・な噺でした。A太郎さんだと「結雛」がとても面白かったのでそれと比べると・・・。ただ、この人の独自性も他の成金メンバーに負けていません。新作派なので特に、本編にもその個性が垣間見えますが、枕にその本領が発揮されます。『冴え渡るディスリ芸!吹き荒れるホラ話!闇を抱えた男前昔昔亭A太郎、ここにあり』というキャッチフレーズが思い浮かんだほどです(俺の勝手な創作)。昇也さんも「天性の詐欺師」と賞賛するほどの、ほら吹きっぷり、闇っぷり(病みっぷり)は見事と言うしかありません(めちゃくちゃ褒めてます、俺)。男前な顔立ち、風貌とは裏腹(まさに表と裏!)に、内面的にますますひん曲がって、ねじれて、落語をこじらせて欲しい。そうすると、もっともっと面白くなるはず!と確信するに至りました。


唯一無二、世界でひとつだけの独特なオーラは健在。鯉八さんは「俺ほめ」。鯉昇師匠とのエピソードからのシームレスな美しい本編への入り方はお見事。桂右女助師匠並みのテクニックに脱帽。これは大好きな鯉八噺の中のひとつですが、神楽坂で聞いたときのほうが面白かったなぁ。どんどん長くなってる?少し冗長な気がしました。面白い噺だから、どんどん盛ってしまうのでしょうか。


昇也さんは、いつもながらにお喋りが好きだなぁ。『しゃべれども、しゃべれども、春風亭昇也』といった感じ。この人の枕はいつ聞いても聞きほれる。なんてことはない内容なのですが、聞いていて楽しくなる。これは何よりも、絶対に、確実に、「昇也さん本人がしゃべることを楽しんでるから」に他ならないと思う。しゃべりたくて、しゃべりたくて、しゃべりたくて、しゃべりたくて、仕方がないんだぁぁ!という前向きな明るい気持ちが客席に届いているからだろうと思います。


今夜の枕はボンボンブラザース先生の偉大さについて。真打たちに乞われている(自分たちの前にやって欲しい。客席を確実に沸かせてくれる・時間調節が上手いから)ことや、ひげダンスの基になっている芸人であるとか、寄席での「鏡味繁二郎」先生の見方・堪能の仕方であるとか。昇也さんの話しを聞いていると、ますます寄席に足を運びたくなります。その他、草津温泉寄席でのエピソード(瀧川鯉津さん・春風亭愛橋さん・東生亭世楽さん)など。独演会が楽しみです。


本編は、大好物の昇也版の「時そば」。他の「時そば」とはあちこち、違っていて、これがまた何度聞いても楽しい(最初の客と二人めの客との関係、蕎麦つゆを飲んでしびれる仕草など)。ただ、相変わらず早口なので・・・。持ち時間の関係もあるのでしょうが、もそっとゆっくり落ち着いて、間を考えて語ってもらえると、さらにさらに面白さが伝わると思うのです。「時そば」のような頭を使うようなネタ(考えオチとか?)がクレバーな昇也さんには似合うのだと思うので、「壷算」も聞きたくなりました。


トリは柳若さんで「宿屋の仇討ち」。上方と江戸のそばのすすり方の違いとか成金メンバーいじりとか、独自のくすぐりが入っていました。ただ、あらゆる「宿屋の仇討ち」は、白酒さんの「宿屋の仇討ち」とどうしても比べてしまう。それくらい白酒さんの「宿屋の仇討ち」は無敵完璧版。また聞きたい。


★マーケティングの視点★

若手が仲良く徒党を組んで興行を打つと言うのは、売れるための王道な気がします。SWAとかTENとか。しかも1000円で4人(4席)。