グズグズ寺(新メンバー加入)

グズグズ寺
春風亭昇也:「小言念仏」
春風亭柳若:「袈裟御前」
三遊亭日るね:「粗忽長屋」
-仲入り-
三遊亭小笑:「饅頭怖い」
神田松之丞:「ムササビの三次召し捕り」


久しぶりのグズグズ寺。今回から三遊亭日るねさんが正式介入。三笑亭夢七さんが脱退(離職)して以来の5人体制に!「夢七江戸噺 其の八」が懐かしい。彼が辞めるときの引退興行以来の大入り満員なのだとか。日るね効果なのか?(松之丞さん効果だろうな、きっと)

開口一番は昇也さんで「小言念仏」。短く刈ることもできる、まさに寄席で演るにはぴったりな噺。ネタとして持っていると重宝するはず。その辺を考えての「小言念仏」なのだろうな。さすがは昇也さん。

ネタおろしなので、まぁ、あれですが。もっともっと「小言オヤジの部屋(家の中)」が見えてくるといいなぁ。割とそつなく空間をイメージさせてはくれていたが。客に想像力を働かせるようにしゃべってナンボのネタ。オヤジを基点とした「(噺の)間取り」が見えるくらいの臨場感が出てくると、もう完璧に自分のもの。巧みな人は「だくだく」や「小言念仏」で、高座の上に空間を浮かび上がらせるからなぁ。オヤジの上手、下手、前景、後景。

でも、独り語り的で、独り突っ込みの連続なこのネタは非常に昇也さん向きの一席に成長していくと思う。誕生の手ごたえは感じたと思っています。これからも期待大!

一方、柳若さん。「袈裟御前」のような地噺(独り語り)は不向きな印象を受けました。地噺はポップに語る人向きだと再確認させられた一席でした。難しすぎる、しかも似合わないねたに挑戦してしまったというコトなのかなぁ。それにしてもA太郎さんも眼鏡、柳若さんも眼鏡。「成金」メンバーは眼鏡だらけに?

待ってました日るねさん。噂の彼女を去年からずっと聞きたい聞きたいと思っていたのでした。念願叶って“初・日るね”。“初・日るね”で、ネタおろしで、「粗忽長屋」ですよ!爆撃3連発な印象、ワクワク感!高座前から俺、ドキドキ!

しかし、しっかし、しーーーーーっかし、凄いね。三遊亭日るね。ぶっ飛んでる。夢七さんとも、こしらさんとも、他の歴代の型破り派落語家たちとも違う型破りっぷり。型を学んだ後に破っているようには思えないので、型無し、無型流!独善無型流!

役作りに勤めていると言う話から、大好きなミュージカルの一節をいくつもいくつも、これでもか!これでもか!とぶつけてくる。良い意味で(どんな意味で?)泥団子をぶつけられている気分。もはや、不快なのだか心地よいのかすらもわからないカオスな空間が、ブラックホールのごとく、徐々に高座上に広がっていく。まさに蔓延!日るね菌、蔓延!(もう大笑いですよ。ある意味) ミュージカルを謳ったりは(三遊亭)亜郎さんもするけど、そんなもんじゃない。「守破離」の逆を、真逆を行く、「破破破」だよ。ははは!

隣に人を作り出して問いかけてみたり(落語のそれとは違う!)もう自由すぎ!

肝心のネタは「堀の内」と「粗忽長屋」を足してフュージョンさせて、2で割って、日るねエキスでコーティングしました!みたいなイリュージョンな噺に。イリュージョン落語!談志か!

固唾を呑んで見守る粗忽噺、久しぶりに体感しましたわ。

そんな中、今夜の出色は小笑さんの「饅頭怖い」でした。

意外!小笑流「饅頭怖い」はイケる!面白い!また聞きたい!以前聞いた(グダグダ風味混じりの)「唖の釣り」を超えるナンバーワンネタ誕生の瞬間に立ち会えて俺幸せ。

「怖い」が、ずっと「嫌い」で違和感あったけど、たどたどしかったけど、いつもながらの安定の不安定っぷりだったけど、日るねさんの後だったからだろうか。初めて、すごく頼もしく思えました。

回転焼き、今川焼き、大判焼きが登場するくだりには笑いました。あんぱんを出してきたときには、多少遣りすぎ?と思いましたが、伏線(ネタフリ)だったのですね。しっかり回収して、大笑いを産み出していました。

米福師匠から教わったという「饅頭怖い」は、しっかり「三遊亭小笑バージョン」に仕上がりつつあったのでした。素晴らしい!

トリは松之丞さん。

俺の中では松之丞さんは、一定の成長ゾーン(成長の地平)に到達したので、以前ほどの興味はない。巧いし、空間支配力も完璧だし、この調子で講談界を掻き回したり、若手なりに突き上げたりしていってください。講談界の未来は(しんどいだろうけれども)松之丞さんにかかっているといっても過言ではない。早く松之丞さんを脅かす、ライバル(第二・第三の松之丞さん)が登場すればいいですね。

で、ネタおろしの「ムササビの三次召し捕り」も、もちろんというか、やはりというか、「でしょうね~」(鯉八さんの口調で)という、さもありなんな完成度。下ろしたてとは思えないほどの完成度。立派です。素晴らしい。しっかり自分のものにできましたね。良かったね!な30分でした。

「天明白浪伝」(全10席)
01話目:「徳次郎生い立ち」
02話目:「稲葉小僧」
03話目:「金棒お鉄」
04話目:「むささびの三次」
05話目:「むささびの三次召し捕り」
06話目:「悪鬼の萬造」
07話目:「首無し事件」
08話目:「八百蔵吉五郎」
09話目:「岐阜の間違い」
10話目:「大詰め勢揃い」

このシリーズの第5話目ですね。前後の話も聞いてみたくなりましたよ、ええ。当然。いつものことながら。「生涯かけて、いろんなシリーズを全話観たい。」その気持ちに変わりはありません。

★マーケティングの視点★
どんなにメンバーが減ろうとも、続けて来て良かったね。そんな今夜の落語会でした。1000円で5人。悪くない。どころかとってもお得で若手好きにはたまらない会です。毎月開催が隔月になってしまいましたが、これからも応援し続けます。そんな人間が徐々に増えて行っての今夜の大入り満員になったのだろうと。継続は力なり。企業も見習って、もっと辛抱強くなってほしい。大きく投資するから、短期回収したくなるのですよ。