お客は、黙って、去っていく。(MRD 通信 2015 年7 月号より)




お客は、黙って、去っていく。



顧客満足とは、苦情を0にすることではなく、
苦情が起きた時の対応こそが、その真骨頂です。
しかも、お客様は、企業側が思っているほど
苦情を伝えてはくれません。


■マクドナルドとペヤングの事件
以前、「食品偽装」が話題になったことがありました。今年は「異物混入」と言われる事件が相次いで起こりました。特に両極端な事例がマクドナルドと、ペヤングです。どちらも同じ異物混入に端を発した事件でしたが、両社の対応はまったく対極にありました。単純に言うとマクドナルドは事件に対して「お詫び(という名の言い訳)」を世間に向けて発表しただけであり、一方のぺヤングは「お詫び」をして主力製品を即座に全面自主回収し、廃棄までしました。結果、世間はマクドナルドの記者会見を見て「本当に悪いと思っているのか」と感じ、ぺヤングの回収廃棄を見て「何もそこまでしなくても…」と感じました。

■その後の影響に大きな差が生まれました
一定の時間が経ち、事件が終息を見たときでも、世間の対応は両極端でした。半年ぶりに販売された「ペヤングソースやきそば」は飛ぶように売れ、営業にプラスな話題をまき散らし、予想以上の注文で製造が追いつかず、関東以外の販売再開延期するほどでした。一方、マクドナルドは客離れが進み、急速に業績を悪化させていきます。マクドナルドは顧客に嫌われ、ぺヤングは待ち焦がれられていました。ブランドは知名度ではありません。マクドナルドのブランドは脆弱でした。ぺヤングは、しっかりブランド(ファン化)ができていました。まるか食品株式会社(本社・群馬県伊勢崎市)は、すばらしい対応を見せました。

■不満ゼロを目指すのではなく
ニューヨークの百貨店「ノードストロム」は、その行き過ぎとも思える顧客対応で世界的に有名です。そこで副社長を務めたベッツィ・サンダースは、自身のロングセラー著書「サービスが伝説になるとき(ダイヤモンド社)」の中で、次のように語っています。

不満を持つ顧客のうち、苦情を言うのは4%にすぎない。あとの96%はただ怒って二度と来ないだけである。
苦情が1件あれば、同様の不満を持っている人は平均26人いる。そのうち6人は非常に深刻な問題を抱えていると推定される。
苦情を言った人のうち、56~70%の人は、苦情が解決された場合、その企業と再び取り引きしたいと考える。その比率は、解決が迅速に行われた場合、96%にまで跳ね上がる。
不満がある人は、それを平均9~10人に話す。13%の人は20人以上に話している。苦情が解決された顧客は、そのことを5~6人に話す。

商売上、最も恐れるべきことは何も言わずに去ってしまう顧客が存在することです。「クレームは宝物」と言われるのは、そのためです。クレームは言われるだけ有難いことであると同時に、それを解消することで逆に人のハートを強く掴むことができます。お客様に関心を。そして何かを言ってくださった方には、誠意を持って素早く対応を。

参考資料:「 サービスが伝説になるとき」 ベッツイ・サンダース著/和田 正春訳 ダイヤモンド社