初代三遊亭天どん真打昇進披露特別興行「天は何を見ているのだ」@成城/08月31日(土)『古典の日』

初代三遊亭天どん真打昇進披露特別興行「天は何を見ているのだ」@成城ホール

8月31日(土)『古典の日』

<昼の部>
三遊亭ぬう生:「狸札」
柳家三三:「釜泥」
五街道雲助:「お菊の皿」
三遊亭円丈:「名古屋版 金明竹」
-仲入り-
口上(並び。左から、三三/たい平/天どん/円丈/雲助)
林家たい平:「七段目」
三遊亭天どん:「紺屋高尾」

 

古典の日の開口一番はぬう生さん。「狸札」。ぬう生さんは新作しか聞いたことがない。正直、新作よりも古典のほうが面白いと感じた。

三三さんは「釜泥」。巧い、如才ない。

雲助師は「お菊の皿」。いつ聴いても、雲助師匠の高座は気持ちよいなぁ。雲助師匠の「もう半分」が聴きたい。すごく聴きたい。

円丈師は「名古屋版 金明竹」。「三遊亭天どん真打昇進記念落語会~圓丈一門Ver~@お江戸日本橋亭」で聴いたから、あまり感動はしなかった。違う噺が聴きたかったなぁ。

口上。並びは左から、三三/たい平/天どん/円丈/雲助。冒頭の拍子木のタイミングが合わず、一度開けた幕をいったん閉じてやり直すという前代未聞な、天どん先生らしいちゃぁらしい(演出?)でリトライ。二度目は三三さんが拍子木を打ち(前座の仕事)、たい平さんが「ございとーざい」と声を上げるという(前座の仕事)、これまた天どん先生らしいちゃぁらしい(演出?)。

口上を聴いていて、祝い事っていいなぁ。人を祝う、御目出度いっていいなぁ。先生はいろんな諸先輩・諸後輩に愛されているなぁと思うと、ちょっとだけウルっと来てしまった。


そう言えば円丈師匠が「名前に天の字を使っている噺家は彼(天どん)しかない。天は最上級であり、どんは一番下。一番上から一番下までできる(芸域の広い?)噺家になってほしいとつけた名前だ」みたいなことを言っていた。出まかせ、後付けにしても素晴らしいと思った。

それが終わるとたい平さん。「七段目」。たい平さんは本当に芸達者。しかも「お客様を喜ばせよう」というサービス精神が豊富で素晴らしい。笑点での姿しか知らない人はぜひとも高座でのたい平師匠を観るべきと思う。普通に落語やらせても、すんごく上手いんだからー。

で最後。トリ。先生の高座は、「創作落語講座」の受講者・生徒の一人として、なんだか、もはや、身内の人が感じるような「大丈夫かなぁ、先生。受けるかなぁ、笑い取れるかなぁ。お客さんに受け入れてもらえるかなぁ」という気持ちで観てしまう。聞けば、他の生徒(クラスメート)も、同じような気持ちを抱いているらしい。俺はおっさんだが「(天どんは)母性本能をくすぐる」という、まことしやかな噂は事実だと思う。

そんな生徒たちの気持ちを知ってか知らずか、天どん先生は昼の部で「紺屋高尾」。いつものごとく、先生の古典落語は(新作よりは)安心して聴くことができる。なぜなら、新作落語よりも笑いが保証されている既知の噺だから。新作ほど、リスキーじゃない。正統派の落語好きな人にも受け入れられやすいはず。

ただし雲助師匠いわく「天どんさんには10席近く噺を教えていますが、(覚えてきました!というのを聴くと、教えた原型が)跡形もない」とのこと。何でも“天どん風・天どん流・天どん的”に変えてしまうのは、それはそれで素晴らしいと思います。

 


 

<夜の部>
三遊亭ぬう生:「四人癖」
桃月庵白酒:「つる」
柳亭市馬:「かぼちゃ屋」
柳家喜多八:「欠伸指南」
-仲入り-
口上(並び。左から、白酒/市馬/天どん/清水/喜多八)
清水宏:「やる気マンマン男」
三遊亭天どん:「鰻の幇間」

夜の部の開口一番もぬう生さん。俺の好きな噺だよ「四人癖」。やっぱ、この人は古典の方が面白いなぁ。それにしても、ぬう生さんって、いつも何かにイライラしている感じ。時計もしょっちゅう見てるし。さりげなく時間を確認する技を習得すると良いのではないだろうか。逆に客側が時間を気にしてしまい、噺に集中できなくて…。

白酒さんは「つる」。知ったかぶり大家の蝋梅ぶり、誤魔化しっぷりとか、白酒さんのアレンジ(くすぐり?)は本当に天下一品だなぁ。ちなみに、俺の中での落語四天王(今一番観に行きたい噺家)は柳家喜多八・桃月庵白酒・三遊亭遊雀・入船亭扇辰。なので以前、先生にもクレームを入れておいた。「なんで、扇辰師匠を呼んでくんなかったんすか!」って。そしたら先生「扇辰師匠も本当は呼びたかったんだけど」って。呼びたい気持ちがあるってことがうれしかった。先生も認めているというか尊敬しているんだなぁと感じたので。

市馬さんは「かぼちゃ屋」。

喜多八師匠は国立名人会でも掛けていた「欠伸指南」を。特別、めでたい噺でもない気がするんだけど、なんか、こういう席でかけても良い符牒があるのかな?それはともかく上手い。幾度となく聞いた師匠御得意の枕だったけど、上手い。やっぱ喜多八師匠最高。頬の虚仮具合が気になりました。健康状態大丈夫なのでしょうか。

口上。並びは左から、白酒/市馬/天どん/清水/喜多八。清水宏さんはぬう生さんから借りるかもしれなかった黒紋付でなくいつものジャージ。ツンデレ・白酒さんは口の悪さで誤魔化しながらも天どん愛を暴露。市馬師は相撲甚句を朗々と歌い上げ。いいよね、こういうの。これにも多少うるっときたけど、違和感を放出しまくりの清水さんが気が気がじゃなくて、昼席の感動までには及ばす。喜多八師匠もちらちら見てるし、清水さんのこと。最後の喜多八師匠が言うように「贔屓の引き倒し」にならないようにしないとなぁと。

口上明けは清水宏さん。古典的な芸だから古典の日に?彼の熱い芸風は聞き及んでいたけど、これほどとは。「やる気マンマン男」の名は伊達じゃない。落語会でスタンディング・オベーションしたのは生まれて初めて。しかも、噺をかける前に(下記)!こんな経験は二度とないはず。いい記念になりました。どこが古典だよ。200%、前衛だよ。

最後、先生は「鰻の幇間」。普通の「鰻の幇間」なら喜多八師匠のが一番好き。またしても比べながら聴いて…と普通はなるんだけど、今夜はならなかった。まだ不完全だと思うが、先生が喜多八師匠くらいの歳になったら、同じくらい完成度の高い「鰻の幇間」になっている。そんな気がした。今後も毎夏、必ずかけて行ってほしい噺です。

 

そうそう。先生登場時には、清水さんと観客が先ほど練習したとおりに、全員がスタンディングオベで先生を迎えるという。即興趣向。あまりの熱狂に、舞台袖から市馬師と白酒師も普段着で飛び出すという。こういう経験も寄席ではなかなかできない。それもまた素晴らしい。まさに演者と客が一体となった会、初日でした。明日はどうなる?