《新作カフェVol.2》林家きく麿・瀧川鯉八 二人会@らくごカフェ

《新作カフェVol.2》林家きく麿・瀧川鯉八 二人会@らくごカフェ


トーク
瀧川鯉八:「暴れ牛奇譚」
林家きく麿:「やぶのなか」(鯉八作)

-仲入り-
瀧川鯉八:「パンチラ倶楽部」(きく麿作)
林家きく麿:「特別エスパー浪漫組」



敬愛する喜多八師匠の得意な枕言葉に「落語は上手下手じゃありません。お客さんと合うか合わないかだ」というのがあります。確かにそうだ、巧いこと言い得てると思う反面、巧いこと逃げてるな(誤魔化すことができるな)とも思うわけです。「合わなかった」の一言で、誰も傷つけることがない。素敵な言葉。そんなわけで今夜の会を誤魔化すなら、「俺には合わない」でした。

顔の似ている2人でトーク。写真撮ってもいいよ、ってんでぱちりと。

鯉八さん。十八番の「暴れ牛奇譚」。ネタ交換(他人のネタを演ること)に苦しんでいた様子だったので、ここはさらりと、なのかなと感じた。しかし、このネタ。何度聴いてもおかしい。鯉八さんが売れていくためには、この手の爆笑噺は必須。もっともっと増えるといいな。でも、“この手の爆笑噺”ばかりになったら鯉八さんじゃない。“この手の爆笑噺”は10本に1本でいい。あとは、不思議な、じわりじわりとおかしい鯉八ワールド噺をせっせと創出してください。

きく麿さん、「やぶのなか」(鯉八作)。予感していた通りの結果に。やはり鯉八噺を他人が演るのは無理なのだ。そう悟った。言っても、きく麿さんは普通の噺家さんなので、無理矢理、普通の落語にしてしまっている。極端な抑揚がないことや、抑制の効いた表現が鯉八流であるのだが、4人を演じ分けようとしてかえって特異性を惨殺してしまっていた。仕方のないことだが残念なことでもある。2種類の喰い合わせが巧く行かなかった例。鰻とスイカ、納豆とパフェ。刺身とハンバーグ。

覚えきれてなく、書き下ろした台本を何度も何度も観ながら演りつづけたのは仕方のないことかもな。鯉八さんいわく「かわいい娘をいたずらされた気持ち」という気持ちもうなずける。兎に角、「プロ」に厳しい俺に言わせれば酷い高座だった。

鯉八さんは「パンチラ倶楽部」(きく麿作)。これも違和感があったなぁ。わかった。ネタ交換しておもしろくなる噺家と面白くなくなる噺家がいるんだ。鯉八さんは自分なりの古典と、自分なりの新作をかけ続けるべきだな。他人の面白噺をかけて、噺家として得ることは多いと思うが、聴いてる客としては得るモノがなかった。

きく麿さんは最後に自分の「特別エスパー浪漫組」。

2回目開催もある様子だが、悲しいがこれっきりだな。毎月の落語軍資金には限りがあるし、他にも観たい顔付けの落語会はわんさかある。鯉八さんは聴きたいけど、う~ん、残念。他の会に金を使おう。顔が似ているよりも、センスが似ている人との方が面白い化学反応が得られるかも。

しかし、鯉八さんは(俺の好みだけで言うけど)共演者に恵まれないなぁ。「だれかと鯉八二人会」「鯉八と誰かと二人会」。その誰かが、観たい噺家だった稀有な例が、こないだの「第36回負けてたまるか 柳亭小痴楽vs瀧川鯉八with三遊亭小笑@道楽亭」くらいしかないよ。松之丞・鯉八とか、誰か企画してください。客は相当入ると思うよ。満員御礼になるよきっと。百栄・鯉八とかだと、天才新作家同士で、さらにすごいことになるはずーーー。あぁ、観たい。八つながりで、喜多八・鯉八なんてのも良いなぁ。「喜多八・志の八・鯉八・くま八」四人会なんてのも良いなぁ。

もっと俺好きのする噺家さん(落語や噺を大事にしてくれる人)と二人会を、あるいは独演会、勉強会を。と、俺などは望まずにはいられないのです。「成金(仮)」も素敵なんだけどね、観に行くと思うけどね。でも俺としてはもっと鯉八濃度が高い落語会が希望なのよ。

新作落語好きだが、俺の好きな新作落語家と、そうじゃない新作落語家が、どんどん明確になってきた。経験値が増えるのはいいことだ。今後はもっと失敗も減るだろう。ただ、無駄が減るのはいいことでも有り、悪いことでもある。今夜に懲りずにもっと積極果敢に、己の好き嫌い直感を信じていろんな噺家さんを聴いて、いろんな落語会に足を運ぼうと心新たに。

ちなみに

一人会:(例え初見の噺家さんでも)落語センサーが反応したら聴きに行く
二人会:どちらかが好きな噺家さんだったら聴きに行く
三人会:3人のうち2人好きな噺家さんだったら聴きに行く
四人会:4人のうち2人好きな噺家さんだったら聴きに行く
五人会:5人のうち3人好きな噺家さんだったら聴きに行く

そんな感じの足運び基準。

その意味では、「両国エンチョウ寄席」<博士に聞け>落語界の鬼才、瀧川鯉八」には絶対に絶対に足を運ぶぜ!「鯉八濃度が高そうだ!」と俺の落語面白センサーが、びんびんに反応しているからな。しかも、1,000円だしな。

 

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