第16回松之丞百席+鯉八初期作品集

松之丞百席+鯉八初期作品集@らくごカフェ

オープニングトーク(小笑凱旋話・本日のネタ解説他)
瀧川鯉八:「ワクワク帰り道」
瀧川鯉八:「明日はホームラン」
-仲入り-
瀧川鯉八:「口臭い」
瀧川鯉八:「どすこい乙女」
神田松之丞「徳利の別れ」


17:20。開場前にと思い行ったところ、3階付近まで伸びる開場待ち人の長蛇の列。ちょっとたじろぐ。

オープニングトーク。先日の小笑さん母校110周年記念講演の凱旋話。付添いの鯉八さん(前座を務めた、自分の母校ではない)の方がウケて120周年講演のオファーをすでにされたとか。商業高校で「壺算」かけて、ダダすべりする小笑さん。俺、嫌いじゃない。

つづいて、松之丞さん主導で、鯉八さんの本日のネタ解説。

「口臭い」:二つ目昇進後初高座でかけたネタ。根多帳には「口臭い 寿 鯉八」と記され、笑点では見せないような真剣な表情で「高座は稽古の場じゃねーんだぞ!」と酷評され、その後、「エチケット指南」に書き換えたとか。3年間かけていないネタ。

「明日はホームラン」:鯉八さんが荒ぶっていた頃の作品。以前かけたときに、お囃子の女性に「私の前で二度とかけないで」と言われたという鯉八落語で松之丞さんが一番好きな作品。

「ワクワク帰り道」:鯉八さん26歳の時の処女作。二度とかけることはないでしょうと鯉八さん。

「どすこい乙女」:オカマの相撲取りの話。声がでなくなる噺なので最後にかけます、と。

--------------------------------------

「ワクワク帰り道」。帰り道を忘れてしまった男が、ホームレスを「帰り道の神様」と勘違い。最後に、その「帰り道の神様」はUFOに誘拐され、天高く吸い上げられてしまい…。現在の鯉八ワールドを彷彿とさせるも俺としては普通。鯉八ギャルの皆さん、笑い過ぎ。

「明日はホームラン」。舞台は入院先の病院。チイコ(小4女子)と、お兄ちゃん(草野球で飯を喰っている)とが織りなすストーリー。短く、あっさりとした噺。言うほど引く噺ではない。春風亭百栄先生の新作「ホームランの約束」と印象がダブってしまった。

ここまで2作を聴いて、正直、(なぁんだ、この程度か。やはり初期の作品は刺さり方が浅いなぁ)と思っていた俺に誰か体罰を!3作目からが全然違ったよ。

「口臭い」。これがウケなかったの?3年前?まじで?大笑いしましたけども?俺!この噺を聴いていて、はたと気が付いた。(鯉八さんの噺では、「二度聞き」の部分が特有で面白い。) 「食前にガム」とか“らしい”フレーズもたんと織り込まれ、(あぁ、この頃には今の鯉八ワールドが確立されつつあったのだなぁ)と感じた。「口臭い」は最近の新作「ある組織」「それそれ」「藪の中」などに匹敵する、俺の鯉八カテゴリーでは名作中の名作ではないだろうかと。

「どすこい乙女」。これには大笑いしました。新人の相撲取りは実はオカマ。四股名は「なんたいさん」。多分、「男体山」と書くのだろうと推測。30年前にヨネスケ師匠がやった設定というだけでお蔵入りさせてしまうにはもったいない「お金の稼げるネタ」だと思います。体格が良くふくよかで相撲取り風情漂う鯉八さんにイメージもぴったり。ヘルシーすぎるトマトベースの鍋を作る「男体山」。横綱になることなど眼中になく、ファンシーショップを開くことが将来の夢の「男体山」。もう最高!お笑い鉄板指数は俺的に「暴れ牛奇譚」を超えていました。

鯉八女性ファンが多いような気がする、自分の会なのに何だかアウェー的な雰囲気の上、しかも鯉八さん4連席、特に「どすこい乙女」で爆笑ムード充満の後、トリは松之丞さん「赤穂義士伝 赤垣源蔵・徳利の別れ」。

「私にも4こ上の兄がいます。絶縁状態です」という枕の後、噺に突入。第15回グズグズ寺で聴いた時よりも迫力拡充5割増。男兄弟。弟の名はゲンゾウ。感情移入しちゃうのは松之丞さんだけじゃなく、俺もなんだよなぁ。この噺。ぐいぐいと空間支配、オーラ噴出しまくり。

いつもは眠気に襲われると手の甲をつねったりしているのだが、今夜は流れ出ようとする涙を抑えるために俺は手の甲をペン先で突いていたのでした。胸が締め付けられ、きゅん、ぎゅ~~~~っとする感激涙噺。

それにしても凄い人だなぁ。プロデューサーとしても、もちろん講釈師としても。

次回、「松之丞百席」2014年2月8日(土)。鯉八さんは出ないが、もちろん、速攻で予約した。