春風亭昇也独演会『フタを開ければ……!』第2回

春風亭昇也独演会『フタを開ければ……!』第2回

春風亭昇也:「写真館」コーナー(トラブルで中止)
春風亭昇也:「権助魚」
春風亭昇也:「おりさん」※タイトル未決定
-仲入り-
春風亭昇也:「ツッコミ指南」※タイトル未決定
春風亭昇也:「時そば」


仕事をそそくさと途中で切り上げ、急いで道楽亭に着くと、橋本さんに「オーディオ詳しい?」と聞かれる。「特段詳しくはないですけども、お手伝いできることがあれば」と俺。

DVDプレーヤーから映像が出ないという。プロ機材の機器配線なんて、チェックするのは無理だろうなと思いつつも、(俺、落ち着け!)と思いながら、冷静にチェック。映像ケーブルはHDMIで来ている。音声ケーブルはイコライザー(セレクター?)につながっている。問題はないようだ。あとは映像チャネル。どうやら「HDMI2」が該当するようだ。入力切替をいじっていると入出力チャネルがつながった。(よっしゃぁぁぁぁ)

DVDの再生ボタンを押す。

押す。

押す。

が、写真画像がでない。

結論。恐らく、こういうこと⇒「写真データを焼いたDVDを、DVDプレーヤーで再生してテレビで見たいのだが、うまく再生できない」。これは、現場で解決することはできない。俺も経験あり。ノートPC持って来て結線するのが一番確実。経験上。

そんなこんなで「写真館」のコーナーは中止。残念無念。昇也さんも動揺していたらしい。そのぶん、開口一番の枕でいっぱいしゃべってくれました。噺家さんのこういう心理状態が見えるのも楽しいですね。すべて前向きに。

DVDトラブルの話、三遊亭右紋師匠の話、大須演芸場の話、桂ちきんさんとの「いとこい漫才」の話など、盛りだくさん。さすがは元漫才師。

で最初のネタへ。師匠・昇太さんに教わったのだろうな。昇太師匠の鉄板ネタ。「権助魚」からのスタート。師匠と雰囲気が似ているから、この手の噺が良く似合う。本当に似合う。もっと落ち着いて、もうすこーしテンポを下げてしゃべってもらうと、こっちも、もっと落ち着いて楽しめるんだけどなぁ。しょっぱなの挫き(DVDトラブル)から来る焦りがあったんだろうなぁ。

続いて。(新作をかけるのが怖い)とグズグズ言いながら(批判じゃありません。心理描写です)、言い訳しながら(批判じゃありません。いまの昇也さんらしくて俺は肯定しています)噺へ。昇也さんの新作を聴くのは初めて。楽しみ。

自殺志願の若者と、飛び降りされるマンション側管理人・住民たちとのストーリー。ブラックでいいですね。ただ、自殺ネタでは、去年暮れ、同じ道楽亭で聴いた三遊亭わん丈さん(俺はこの人も好き)の新作「自殺屋」とテーマ的にはかぶりますね。もちろん、中身は全く違いますが。マンションの住人が五人出てくるってことでは「五人廻し」をも彷彿とさせた。さまざまなキャラを登場させるとこなど、今後の発展が楽しみな点。タイトル未決定とのことで、ここでは勝手に「おりさん」と名付けました。掛け捨てする気持ちも垣間見えましたが、俺としては、捨てずに適当な会で掛けながら磨いてほしいです。これに限らず、すべてのネタに言えることだけど。

仲入りを挟んで、またもや新作。これも前説付き。さすがは元漫才師。ツッコミがテーマの新作らしい。「ツッコミ村」というタイトルが面白いと昇也さん。確かに。これはそそるタイトルネーミング!

ただ、突き詰めていくと「ツッコミ村」をするためには「ツッコミ指南」をしなければならないとかなんとか。今夜のは「ツッコミ村」じゃなくて、「ツッコミ指南」ですよね?タイトル未決定とのことで、ここでは勝手に「ツッコミ指南」と呼ばせてもらいますけども。こっちのほうが捨てちゃだめですよね。ウケてたし。また聴きたいし。どんどんかけてキンキラに磨いちゃっていただきたい。

で、最後は最近の自信作なんだろうな、「時そば」。先日の「第17回グズグズ寺」のところで書きましたが、俺は鯉昇師匠の「蕎麦処ベートーベン」が大好きでして。

そしたら、なんと!昇也さんは柳若さんといっしょに鯉昇師匠から教わったんだそうで。うーん、縁を感じる。

兄貴と弟分という設定は昇也さんのオリジナルだそう。「他の人間が傍らで見ていたという設定が不自然で」と。同感です。それだからこそ、兄貴と弟分という設定に自然さを感じて、この噺にのめりこめるわけで。だから、面白いわけで。

残念ながら、「第17回グズグズ寺」の時とは違って、大事なおもしろ部分(後半のあたり屋云々のくだり。俺、ここの部分、好きよ)が抜け落ちていたけど、今夜のデキゴト・心理状態からして、ま、さもありなんかな。また、それもよし。すべてを肯定的に受け止めて行ける。これが、ザ・ファン心理。

反省の弁付きでの終演でしたが、いやー、今夜のようなコトがあるから落語会通いはやめられないのだ。生落語最高。ライブ最高。落語は生きている。いや、まさに。本当に生き物。

先日生まれた(世に放たれた)「時そば」は言うに及ばず、今夜生まれた新作2作とも、これからどう噺が育って行くのか楽しみで仕方ありませんよ俺は。「今夜来てくれたお客さんは家族だ!」とファミリーにも認定されたし。書けない話もたくさん。

将来、「歌舞伎座で落語会するのが夢」という昇也さん。「今夜来てくれたお客さんは全員招待しますよ」と言ってくれた。ありがたや。ありがたいけど、俺は自腹で観に行くぜ!自分で金は払う。ただ、そんとき、チケットは相当散りにくくなってるだろうから、絶対に俺の分だけは確保はしてくださいよ。

若手二つ目さんの成長や苦悩を感じるのは、客冥利に尽きます。いやー、楽しかった。今夜もありがとうござんした。